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波の音が聞こえる場所で
第5章 湯口の上の狸に独り言をぶちかましてやる
「キンタ、強がっていないか?」
「俺が? どうして強がらないといけないんだ?」
「温泉に入りに来る客なんてむさ苦しいおっさんが多いだろ?」
「かけちゃん、温泉に来る客がみんなむさ苦しいわけじゃない。かけちゃん、想像力が足らないな。そんなんじゃこの世界生きていけないぞ」
「この世界ってパワハラ、セクハラが蔓延している世界のことか?」
「その通りだ。ややこしい世の中だからこそ温泉に入る。そして心を無にして想像する」
「心を無にした想像ってどういうことだ?」
「悟りの境地のことだよ、かけちゃん」
「悟りの境地……って随分難しい言葉を知ってるじゃないか?」
「狸を馬鹿にすんなよ。俺は日々学んでいる。そして全身で感じ取るんだ。それにここは弥彦だ。神様の街だ。俺は毎日弥彦の神様からパワーを授かっている。ありがたいことだよ」
「僕もそのパワーが欲しんだが」
 今僕に足らないものは間違いなくパワーだ。
「ちょっと立ち上がってみろ」
「どうして立ち上がらないといけないんだ?」
「いいから立ってみろ」
「……」
 僕はキンタの方を向いて湯舟の中で立ち上がった。おそらくキンタは僕の頭の先から湯の中に隠れている足まで何度も見たに違いない。
「若いのに何だかだらしない体してんな。運動とかしないのか?」
「バスケをやってた」
「やってたってことは今はしていないということだろ?」
「そうだ」
「弥彦山でも登ったらどうだ?」
「弥彦山……」
「弥彦山は神体山だ」
「神体山?」
「そう、神体山」
「高いところは苦手なんだ」
「そうなんだよな、意外と背の高い奴の中には高所恐怖症が多い。まぁ調べたわけじゃないがな」
「僕が高所恐怖症だとかそんなのはどうでもいい。肝心なのはパワーだ。神様は僕にパワーを与えてくれるのか?」
「無理だな」
 キンタは何の躊躇いもなくそう言った。
「どうしてだ?」
 僕にはその理由を聞く権利がある。
「それだよそれ。そいつがかけちゃんの人生を狂わしている。だからパワーなんてかけちゃんには近寄らない」
「それって何だよ?」
「だからそれだだって」
「……」
 ようやくキンタの視線の先が僕のペニスに向かっているのがわかった。
「かけちゃんの股にだらりとぶら下がって地球の中心を指しているへちまみたいなもののことだ。そいつ生きてんのか?」
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