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波の音が聞こえる場所で
第5章 湯口の上の狸に独り言をぶちかましてやる
「僕とこいつは一心同体だ」
 僕は自分のペニスに目を向けた。
「一心同体って何だよ。かけちゃん、はっきり言えよ。正直に告白するんだ。ここには俺とかけちゃんだけだ。恥ずかしことなんて何もない。裸の付き合ってやつだよ。やらかしたんだろそいつで。それではるばる新潟県弥彦村までのこのこやって来たんだ。だろ? 話してみろよ、楽になるぜ」
「……」
 キンタ恐るべし。一言も返せず。ていうかテレビドラマでよく見る警察での取り調べ。次にキンタは僕のお袋のことを持ち出すだろう。例えばこんな感じで「故郷のおふくろさんが泣いてるぞ」と。それから取調室で欠かせないあの品。それはカツ丼。ただ、僕にとってのカツ丼は第一食堂のカツ丼だけだ。出前不可。それからどんな淹れ方をすればこんなに薄いお茶になるのか? と疑問を持ってしまうほぼ白湯のような緑茶。これで落ちない犯人はいない……待て待て僕は何か悪さをした覚えなどない……と思う。
「ぶらりと垂れさがったかけちゃん自慢のいちもつ。まぁ、俺に言わせてもらえれば自慢するほどのものじゃないけどな。そのぶらぶらしたものが悪さしたんだろ。さっきはのこのこやって来たって言ったけど、逃げてきたんだな。かけちゃん、自首しな。自首して罪を償うんだ。でなきゃ再生できないぞ」
「キンタ、教えてくれ。僕はどういう機関に自首すればいいんだ?」
「知らん」
「無責任じゃないか。仮にもキンタは僕に自首しろと言っているんだ。キンタの言うことを僕は真面目に聞いているんだぞ」
「かけちゃん、俺は狸だ。これ以上俺を責めると動物愛護条例? 愛護義務? 愛護……なんとかで訴えるぞ」
「キンタ、お前駆け引きもできる狸なんだな」
「長く生きてるといろいろなことを覚えるんだ。良いことも悪いことも頭の中に遠慮なしに入って来る。長生きするの考えものだな」
「……」
 僕はキンタが言った。やらかしたことについて考えてみた。確かに調子にのってやらかしまくった。友人にも恵まれなかった(直江以外、そして直江が僕のことを友人と思っているのか不明)。
 そして間違いなく、僕のやらかしたことが僕を無謀な逃走に導いた(そもそも逃走は無謀だと思うが)。
 アホくさい……何のために生きてるんだ? 僕は何がしたいんだ? お前の夢は何なんだ? よくある青春ドラマの生きずらさみたいなものを僕は体現しているのだろうか?
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