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波の音が聞こえる場所で
第6章 救世主現る
 恐るべし新潟の中学生。この寒さをコート、ダウン無しで過ごせるなんてまじでやばいと思う。
「みんながみんなそうというわけじゃないよ。でも新潟の子は寒さに強い」
「風邪ひかないんですか?」
「ひくよ。だって人間だもん」
「……」
 僕は唖然とした。そして呆れた。風邪ひくならコート着ればいいのに。
「君今さ、風邪ひくならコートとかダウン着ればいいのにって思ったでしょ」
「思いました。ていうか普通そう思うんじゃないんですか?」
「でも彼らは着ない。ダルマみたいになるくらいならカッコイイ姿で歩きたいんだろ」
「僕はダルマで結構です」
「ははは、君面白いね。ところで君の名前は?」
「あっ、車に乗せていただきありがとうございます。僕は坂口翔といいます」
 車に乗せてもらったのだ。礼を言うのは人として当然のことだ。
「かけるってひょっとして翔と書く?」
「はい」
「羽ばたいたことある?」
 乗せてもらってこんな風に思うのは何だが、面倒くさいおっさんだ。
「ないです」
「ジョークだから、ははは」
「……」
 早く魚市場につくことを僕は祈った。
「僕は久須美と言います。久須美寿郎です」
「久須美さん、本当にありがとうございました」
 僕はもう一度礼を言った。
「ところで坂口君は魚市場に何しに行くの? 見たところ買い物じゃなさそうだし」
「僕はどんな風に見えますか?」
「魚市場に行くというより、死に場所を求めて歩いているように見えたんだけど」
「死に場所? 僕が?」
「違う?」
「断じて違います!僕は死のうとは思ってません!」
 僕は声を大きくして否定した。
「あーよかった。坂口君がまだ生き続けるという強い意志が僕にビンビン伝わりました」
「……」
 取り合えず誤解は解けたようだ。
「でもさ、ジャケットにぺちゃんこのリュック背負って歩いている人間なんて僕見たことないもん。その川に飛び込まれでもしたら、川だって迷惑だし。それ以上に地元の人間が不気味に思うよね。それとさ、君体が大きいからさ、棺だって特注になるかもしれないでしょ。そうなるとめちゃくちゃ鬱陶しいよね」
「……」
 黙って聞いていればいい気になりやがって。僕の死(僕は死んでいないし、死ぬ気もない)を久須美というおっさんは鬱陶しいと言いやがった。
「で、魚市場には?」
「バイトです!」
 大きな声で言ってやった。
「バイト!?」
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