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波の音が聞こえる場所で
第6章 救世主現る
「僕の推測なんだけど、坂口君バイト先決まってないんじゃないの?」
「決まってません」
「採用されなかったらどうするの?」
「採用されるところを探します」
「ということは、どうしても魚屋さんじゃなきゃだめって言うわけじゃないんだね」
「はい」
「だったら僕の店で面接受けてみない?」
「僕の店で面接って、久須美さんのお店ですか?」
「そう、僕の店」
「久須美さんのお店は何をされてるんですか?」
「中古品を売ってんの。今で言うとリサイクルショップ」
「どんなものを売られているんですか?」
「何で売ってるよ。魚は売ってないけどさ」
「例えば?」
「例えばね……ダウンジャケットとか」
 運転をしている久須美の目が、僕に向かって来た。そして彼の目は一瞬で僕の服装をチェックした。
「衣料品のリサイクルショップですか?」
「いやいや何でも売ってるよ。服だけじゃなくてさ、家電、家具、それから古本、さらにレコードとかさ。要するに何でも屋なんだ」
「……」
 何か一つに絞れよ、と言いたかったがそれは久須美の仕事で僕には関係ない。もちろん僕は思案した。そんな僕の様子がわかったのか、久須美はこう畳みかけてきた。
「坂口君さ、今日寝るとこある? 間違ってたらごめんね。見たところお金なんて持ってなさそうだし、だからこの辺の山賊には襲われないんだけどさ」
「山賊出るんですか!?」
「山賊なんていつの時代のことだよ。出ないよ。でも僕さ、だんだん坂口君が好きになってきたよ。僕のつまらない冗談にめちゃくっちゃ反応してくれるでしょ」
「……」
 クソ親父!と僕は心の中で叫んだ。いや、それよりも久須美の言うことから僕は目を遠ざけていた。今日の寝床、僕には大問題なのだ。
「坂口君、どうする? まぁ僕が面接してダメだったら別のころを探せばいいじゃん。でもね一飯はないけど、不採用でも今日くらい宿は坂口君に提供するよ。ふかふかのベッドじゃないけどさ」
「……」
 久須美を信用していいものなのかそれとも信用するに値しない男なのか、僕には判断できない。
「坂口君、じっくり考えなって言いたいんだけど、正面左に橋が見えるでしょ。あそこを渡ると魚市場。渡らずに道なりに進むと僕の経営する中古品店Lighthouse。だから今すぐ決めて、魚を選ぶのかそれとも灯台を選ぶのか。あの橋が君の人生の分かれ道かもよ」
「……」
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