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波の音が聞こえる場所で
第7章 誠に遺憾ではあるが、ここから冒険を始めることにする。

僕は遠くから誰かに呼ばれているような気がした。でも僕はそれに答えるつもりなんてない。眠りの中で僕はまだ眠いと感じているのだ。これはひょっとしたら眠り病かもしれない(そう言う病があるのか僕はわからないが)。おそらくこの眠り病は、僕の命を終わらせるような恐ろしい病気ではないだろう。
症状がそれを証明している。眠り病……、それはもう気持ちよくて、だから身も心も委ねることができるわけであって、つまりそういう病は生死を彷徨う病ではないという結論が導き出されるのだ。
ただ誰かが僕を呼ぶ声が止まない。その声はこう言っていた「おい」とか「起きろ」と。誰かはこの二つの言葉を交互に繰り返している。とてもリズミカルに、どこか遊んでいるような感じで声はリピートされた。
眠りながら僕は、僕を起こそうとする声を分析した。その声の主は女だ。そして少し尖った言い方(優しさとか含まれない言い方)をしている。友好的に聞こえない声なんて無視するに限る。だから僕は眠り続けることにした……。
しかし、冷たい刃物のような声が止むことはなく、そのせいか僕は顔の一部に軽い痛みを感じるようになった。仕方がない、ここは声の主だけでも探っておこう。相手の素性だけでもわかれば痛みの原因はわかるだろうし、それさえわかれば身を守る手段も見つかるはずだ。
如何せん眠い。だからぴたりと閉じた瞼を開けるのが、もうそうれはそれは大変な作業になったのだ。目を開けるのがこんなに大変だとは夢にも思わなかった。僕は顔を微妙に引きつらせながら、その勢いみたいなものを借りてようやく目を開けた。いや、こじ開けた。
すぐには焦点が合わない。僕はゆっくりゆっくり眠りの世界から現実の世界に移動を始めた。
誰かの目と僕の目が合った。天才美術部員が描いたような切れ長の目。そしてその目じりには、僕に向けられた真っ向勝負のボール……小皺。人に歴史あり。僕は時間が刻んできた美しい小皺を舐めたい。絶対にペロペロと舐めてやる。
ん? おおお!天才美術部員の仕事に抜かりはなかった。ほうれい線が見事に消されている。グッジョブ!美術部員。
顔の中心に鎮座している鼻がめちゃくちゃ綺麗な形で、そして高い。厚くもなく薄くもない唇。僕は確信した。ここはあの世だ。死後の世界というやつだ。でも悪くない。
僕は、僕を覗き込んでいるうりざね顔の熟女に恋をした。
症状がそれを証明している。眠り病……、それはもう気持ちよくて、だから身も心も委ねることができるわけであって、つまりそういう病は生死を彷徨う病ではないという結論が導き出されるのだ。
ただ誰かが僕を呼ぶ声が止まない。その声はこう言っていた「おい」とか「起きろ」と。誰かはこの二つの言葉を交互に繰り返している。とてもリズミカルに、どこか遊んでいるような感じで声はリピートされた。
眠りながら僕は、僕を起こそうとする声を分析した。その声の主は女だ。そして少し尖った言い方(優しさとか含まれない言い方)をしている。友好的に聞こえない声なんて無視するに限る。だから僕は眠り続けることにした……。
しかし、冷たい刃物のような声が止むことはなく、そのせいか僕は顔の一部に軽い痛みを感じるようになった。仕方がない、ここは声の主だけでも探っておこう。相手の素性だけでもわかれば痛みの原因はわかるだろうし、それさえわかれば身を守る手段も見つかるはずだ。
如何せん眠い。だからぴたりと閉じた瞼を開けるのが、もうそうれはそれは大変な作業になったのだ。目を開けるのがこんなに大変だとは夢にも思わなかった。僕は顔を微妙に引きつらせながら、その勢いみたいなものを借りてようやく目を開けた。いや、こじ開けた。
すぐには焦点が合わない。僕はゆっくりゆっくり眠りの世界から現実の世界に移動を始めた。
誰かの目と僕の目が合った。天才美術部員が描いたような切れ長の目。そしてその目じりには、僕に向けられた真っ向勝負のボール……小皺。人に歴史あり。僕は時間が刻んできた美しい小皺を舐めたい。絶対にペロペロと舐めてやる。
ん? おおお!天才美術部員の仕事に抜かりはなかった。ほうれい線が見事に消されている。グッジョブ!美術部員。
顔の中心に鎮座している鼻がめちゃくちゃ綺麗な形で、そして高い。厚くもなく薄くもない唇。僕は確信した。ここはあの世だ。死後の世界というやつだ。でも悪くない。
僕は、僕を覗き込んでいるうりざね顔の熟女に恋をした。

