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波の音が聞こえる場所で
第7章 誠に遺憾ではあるが、ここから冒険を始めることにする。
 死後の世界に遠慮なんていらない。僕は上と下の唇をぴたりと合わせてからすぼめて、それからそのすぼめた唇を目一杯尖らせて、熟女の唇に突進した。
 重なり合う口と口、どこかのタイミングで僕が、いや熟女が口の中に舌を入れてくる。口の中に舌が入れば、互いの舌が絡み合うのは必然。愛し合う行為はこうして始まるものなのだ。何だかドキドキしてきた……ような気がする。
 が、口と口がなぜか重なり合わない。重なり合わなければ、こちらから求めればいいだけだ。僕はさらに上と下の唇を漫画で描かれるタコの口(実際のタコの口を僕は見たことがない)のようにして、熟女の口に向けて一直線に突き進んだ。
 そのときだった。「ピシッ」いや「ビシッ」という音と共に僕ば頬に強烈な痛みを感じた。頬を叩かれたと気付くのに五秒位かかった。五秒間、僕の生命活動は停止していたと思う。
「坂口、お前ふざけるんじゃないよ」
 僕を見下ろしている熟女はそう言った。
「……」
 僕は何も言えない。先ほどまでキスの準備をしていた僕の口が半開きになっていたのだ。そして口の端から涎が流れている。
「こんなのが六大学? 六大学も落ちなものだね」
「……」
 何のことだかさっぱりわからない。しかし、ここぞとばかりに畳みかける勇者……ではなく熟女。
「坂口、あと五秒で起きないとあんたを燃えるゴミに出すぞ」
「……五秒……」
 燃えるゴミって、僕はいつから燃えるゴミになったんだ。そして不思議なことに僕にまとわりつく五秒いう時間。
「ワン、ツゥ、スリー」
 トゥではなく、ツゥー。熟女のカウントが始まった。
 僕は起き上がった……のではなく起き上がろうとした。体の自由が利かない。僕は寝袋に包まれて休んでいたことを忘れていた。それでも何とかして僕は上半身だけを起こした。
「すみません」
 僕の第一声。何だか情けない。取り合えず謝っておけば、波風は絶対に立たないという僕の生き方。
「早く起きろ!」
 暴風雨を引き起こす熟女の台詞。
 目が覚めた。目は覚めたのだが、今一つ状況が把握できていない。だから今の自分について考えた、そしてまた考えた。徹底的に考えた。
 ようやく僕は自分が何者であるかがわかった。僕は逃走者なのだ。上野駅から新幹線に乗って海辺の街に逃げてきたのだ。残念なのはここは居酒屋ではないということだ。訳あり風の女将はいなかった。
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