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波の音が聞こえる場所で
第7章 誠に遺憾ではあるが、ここから冒険を始めることにする。
 ようやく状況が飲みこむことができて、僕は寝袋から体を出した。僕は久須美の面接試験に合格して、アルバイトとしてリサイクルショップLighthouseに雇ってもらうことになったのだ。面接試験については少し後で話すことにする(そしてこの面接試験のせいで、僕の逃走は、逃走ではあっても逃走でなくなってしまった)。
 僕は姿勢を正して熟女に挨拶をした。
「坂口翔と言います。どうぞよろしくお願いします」
 十畳ほどの小さな事務所にはスチール机が二つ、向かい合ってぴたりとくっついている。一つは久須美の机。もう一つはこの熟女の机? なのだろう。熟女はキャスター付きの椅子に座って僕を見上げた。
「でか」
「すみません」
 もちろん僕の背が高いことでこの熟女に迷惑など掛けてはいないが、どうしても謝ってしまう。
「身長は?」
「百八十九㎝位だと思います」
「面倒だからさ、百九十でいいわ」
「……はい」
 よくないと思うけど、逆らえない。
「私は福克子。六十五歳、独身よ」
「六十五!」
 びっくりした。この熟女、ではなく福さん、六十五には到底見えない。五十だと言っても十分通じる……ん? 何か変な気持ち……そうだ、福さん、自分から歳を言った。女の人が自分から歳を言うなんて僕は初めて聞いた。でもって福さん、独身!
「文句ある?」
「全然ないです」
「ここのスタッフはみんな私のことを社長と呼ぶの。だから坂口も私を社長と呼んで」
「社長さんなんですか?」
「経理と、雑用をしているだけ。社長は私のニックネームよ。文句ある?」
「全くありません」
「じゃあ、これから掃除をするわね」
「了解です。何でもやります」
「何でもやるって当たり前じゃん。何でもやって儲けないとこの店潰れるでしょ。店が潰れたら、坂口、困るよね?」
「困ります」
「でさ、その格好だと坂口死ぬからさ。このお店でお買い物してきて。ダウンもコートあるからさ。もちろんつけでいいわよ。たくさんのお買い上げ期待してま~す」
「はい」
 何だか押し売りみたいだけど、現実問題として僕には新潟対応の防寒着が必要だ。
「坂口、参考までに今外の様子を見てきな。買うものが自動的にわかるわ。雪国の冬、なめんなよ」
「はい」
「それと坂口さ、私にキスしようとしたのは誰にも言わないから」
「えっ?」
「みんなに言っていいの?」
「秘密厳守でお願いします」
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