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波の音が聞こえる場所で
第7章 誠に遺憾ではあるが、ここから冒険を始めることにする。

金玉をぎゅっと握られたような感覚が、僕の全身を駈け回っている。寝ぼけていたとはいえ、僕の性癖が福さんにバレてしまった(バレてないかもしれないが)。ここはおとなしく過ごさなければならない。おとなしく過ごすということは、目立たず、適当に役に立って、次の本格的な冒険の準備をするということだ。だから僕は取り合えず“灯台”で羽を休めることにする。いやいや違う、僕は“灯台”で働く。
福さんから外を見てこいと言われたので、僕は言われたとおりにリサイクルショップLighthouseの入り口に向かった。そこから外の様子を窺うと、めちゃくちゃ強い風が吹いて。その風の勢いで、雨が駐車場の地面に叩きつけられていた(傘不要、ではなく傘なんてさせない)。
久須美に拾われた僕は命を拾った。久須美の面接を断っていたら、間違いなく僕の名前は、新聞の社会面にまっしぐらだったに違いない。
二十台くらい車が駐車できるスペースには、車が一台もとまっていない。雨風と寒さを確認してから僕は店内に戻り、開店前の店内で当面の寒さを凌ぐための衣料品を選ぶことにした。二日三日もすれば、僕の家から荷物が届くはずだ(なぜそうなったのかについては後で話すことにする)。きっとその中には僕のための支援金も入っている……だろう。
今僕は金を持っていない。正確に言えばほとんど持っていない。だからここでの買い物はつけ払いとなる。支援金さえ来れば、一時的な借金地獄からは解放される。早く来い来い支援金。僕はそれに即興のメロディーをつけて二回繰り返した。
店はテニスコートくらいの広さで、その半分が衣料品の売り場となっている。残る半分は家具と雑貨、そして家電製品。後はレコードとか古本とか。とにかく何でも売っている。
だが今の僕に必要なのは自分の命を守る衣料品だ。家具とか家電なんかどうでもいい。レコードと古本? 何で河口の端の高いところにあるリサイクルショップで古本を売らなければならないのだろうか。まじで古本とレコードが鬱陶しい。
衣料品をざっと見てもいい品物がない。僕が言ういい品物とは、自分のサイズに合うという意味だ。ほとんど僕の体のサイズに合わないものばかりだ。そして男性物より女性物の方が圧倒的に多い。しかし、たとえ女性物であっても何かしら衣料品を求めなければ、絶対に僕は風邪をひく。風邪をひくという自信が僕にはある。
福さんから外を見てこいと言われたので、僕は言われたとおりにリサイクルショップLighthouseの入り口に向かった。そこから外の様子を窺うと、めちゃくちゃ強い風が吹いて。その風の勢いで、雨が駐車場の地面に叩きつけられていた(傘不要、ではなく傘なんてさせない)。
久須美に拾われた僕は命を拾った。久須美の面接を断っていたら、間違いなく僕の名前は、新聞の社会面にまっしぐらだったに違いない。
二十台くらい車が駐車できるスペースには、車が一台もとまっていない。雨風と寒さを確認してから僕は店内に戻り、開店前の店内で当面の寒さを凌ぐための衣料品を選ぶことにした。二日三日もすれば、僕の家から荷物が届くはずだ(なぜそうなったのかについては後で話すことにする)。きっとその中には僕のための支援金も入っている……だろう。
今僕は金を持っていない。正確に言えばほとんど持っていない。だからここでの買い物はつけ払いとなる。支援金さえ来れば、一時的な借金地獄からは解放される。早く来い来い支援金。僕はそれに即興のメロディーをつけて二回繰り返した。
店はテニスコートくらいの広さで、その半分が衣料品の売り場となっている。残る半分は家具と雑貨、そして家電製品。後はレコードとか古本とか。とにかく何でも売っている。
だが今の僕に必要なのは自分の命を守る衣料品だ。家具とか家電なんかどうでもいい。レコードと古本? 何で河口の端の高いところにあるリサイクルショップで古本を売らなければならないのだろうか。まじで古本とレコードが鬱陶しい。
衣料品をざっと見てもいい品物がない。僕が言ういい品物とは、自分のサイズに合うという意味だ。ほとんど僕の体のサイズに合わないものばかりだ。そして男性物より女性物の方が圧倒的に多い。しかし、たとえ女性物であっても何かしら衣料品を求めなければ、絶対に僕は風邪をひく。風邪をひくという自信が僕にはある。

