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波の音が聞こえる場所で
第7章 誠に遺憾ではあるが、ここから冒険を始めることにする。
 何だかんだと言っても僕はいい出会いをしていると思う。久須美さん、福さん、そしていっちゃん。“灯台”で働くことになったが、それはそれでついていると言っていいのではないか。いや、間違いなく僕には幸運の女神が付いている……はずだった。
 ところが平穏だった時間が、ある人間の出現で店内の空気は一変した。リサイクルショップ灯台は不穏な時間を刻み始めたのだ。
「店長!社長!いっちょく!」
 でかい女の声が店の入り口から聞こえてきた。どれくらいでかい声かというと、海の向こうの佐渡島に聞こえそうなくらいにでかかった。僕といっちゃんは同時に声の方に顔を向けた。
 店の入り口に立っているでかい声のでかい女と目が合った。まずい、修学旅行先で他校の生徒と目を合わせてはいけない、あのパターンのような気がした。ここは退却した方が無難なのだが、退却先がわからない。
 でかい女がこっちに向かってくる。ジーンズに紫色のスカジャンみたいなのを羽織っている。普通女がそんな格好するか? みたいな実にユニークな服装のセンスをしている。
 僕の中でサイレンが鳴り始めた。この女に関わるなよと、緊急事態を知らせるサイレンが体中で鳴り響いている。
 女が僕の目の前に立った。腕組みをして僕を下から睨みつけてきた。視線を外したいのだが、女の目力がそれをゆるしてくれない。我慢しきれなくなったのは僕だった。
「何?」
 僕は何とか声を絞り出した。
「……」
 女は黙って僕を観察していた。五秒、六秒……時間が経過した。
「いっちょく」
 女はいっちゃんを呼んだ。
「はい」
 素直に返事をするいっちゃん。
「いっちょく、こいつから目を離すんじゃないよ」
 妙にどすの利いた声。
「玲奈さん、こちら坂口さんです」
「……」
 初めまして、坂口翔と言います。と言おうとしたが止めた。言ったらこの女に負けたような気がしたからだ。
「……」
 視線をまだ外さないでかい声のでかい女。
「あのさ、自己紹介くらいするのが常識だろ」
「はぁ? 常識だと? 寝ぼけてんじゃないよ無職のバカ大学生が!」
 いくつか疑問が生じた。大学生が無職で何が悪い。それにバカとはどういうことだ。
「先輩、大学生なんですか? カッコイイな。大学どこですか?」
 いっちゃん、お願いだから一旦落ち着こう。
「おっ、喧嘩はダメだよ喧嘩は」
 それは久須美の声だった。
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