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波の音が聞こえる場所で
第7章 誠に遺憾ではあるが、ここから冒険を始めることにする。
「あの、僕アルバイトなんですけど」
「それがどうかした?」
「それがどうかしたって、アルバイトが主任って変じゃないですか?」
「どうして?」
「だってアルバイトですよ。時給が新潟県の最低賃金の男ですよ。でもってリサイクルショップなんて初めてだし、そんな男が主任って世の中というかこのお店というか……絶対におかしいです」
「世の中のことはこの国の政府に任せればいいのよ。で、この店は僕が仕切ってるの。仕切っている僕がそう決めたんだから坂口君はそれに従えばいいわけ。ノープロブレムでしょ?」
「いや……イエスプロブレムだと思うんですが」
「坂口君、君、勢いで変な言葉作らないでね。仮にもR大学の経営学部なんだから」
「店長、こいつR大学なの?」
 僕は生まれて初めて「こいつ」と呼ばれた。店長は僕のことを坂口君と呼ぶ。福さんは僕を坂口と呼び捨てにする。そしていっちゃんは僕を先輩と呼んでくれる。僕を「こいつ」と呼んだクソ女を僕は生涯忘れないだろう。いや、坂口家のためにも忘れてはいけない。だから僕は反撃した。
「こいつって誰のことだ!」
 精一杯凄みを利かせたつもりだったが……。
「お前しかいないじゃん」
 怯まないバカ女。
「お前ごときにお前と呼ばれる覚えはないわ!」
 スムーズに怒りの言葉が出た。心の中でガッツポーズをする僕。
「坂口、玲奈ちゃん、そういうの外でやって。うるさいし、面倒だし、いっちゃん怖がるし」
「社長、僕は全然平気です。ていうか大人の喧嘩って何だか……何だかいいです、感激です!」
 いっちゃん、違うぞ、それは絶対に違う。感激するところを間違っている。とにかくそこじゃないからな。
「はいみなさん冷静になりましょう。怒鳴り合っても売り上げは増えません。売り上げが増えないと、みなさんにお渡しするお年玉の金額も増えないということです。お金があるないは現実の問題なんですよ、わかりましたか坂口君」
 みなさんと言っておきながら、最後に坂口君って、僕一人を悪者にするなんて新入アルバイトいじめだ……ん? お年玉? 金の話に反応する自分が情けない。
「すみません店長、現実の問題のところで出たお年玉って何ですか?」
「坂口君だってお年玉貰ったことあるでしょ?」
「貰ったという記憶が数年前に消えたみたいです」
「坂口君、ナイス。流石六大学」
 久須美も六大学の使い方を間違えている。
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