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波の音が聞こえる場所で
第2章 JR上野駅と演歌についての考察、そして子供たち
 願いが通じれば人生の中の苦難の一つはなくなるはずだ。人生って、生きるって簡単なことではない。複雑で、だから難しくて……少しだけうんざりするものなのだ。
 過去から背を向けたところで、過去は消えるどころかその姿を鮮明にして僕を追いかけてくる。来るなと言っても執拗に追いかけてくる。
 文庫本とスマホを持たない僕は、目を瞑り必死になって追手から逃げた。逃げて逃げて逃げまくった。すると体がぞくぞくしてきた。寒さのせいではない。車内は適度な暖房が入っている。そのぞくぞくとした感覚はやはり心にまとわりついたものだった。何だろう? 僕はそのぞくぞくした感覚と向き合った。そのぞくぞくした感覚を無視することはできない。何だろう? ……何だろう?
 あっ!思わず声が出そうになった。そして僕は目を大きく見開いた。
 とても大事なこと……大切な子供たち……。
 この先僕には輝かしい人生なんて待ってはいない。輝こうが輝くまいが、僕は自分の人生に期待などしていないし、すべきものでないと思っている。大学だってやめる覚悟だ。そもそも何かを猛烈に勉強したいなんて思って大学に入ったわけではない。少しは就職に有利になるかもしれない、そんな感じで大学に通っていたのだ。
 この先輝かしい人生を送る子供たちにバカにされながらも、僕は算数と理科を子供たちに教えていた。
 授業だってこれから冬期講習を迎えるのだ。僕も講習では何コマかを担当することになっている。僕の逃走、それはイコール授業の放棄ということになる。僕のもう一つのバイトであるスポーツジムの受付なんて僕がいようがいまいが何とかなる……に違いない。
 こんなクソ野郎でも、子供たちをこのまま放っておくことはできないということくらいわかる。塾の先生がすぐに見つかることなんてないだろうし、仮に見つかったとしてもその先生が上手く指導できるかどうかわからない(東大生だからいい授業ができるとは限らない。相性というものが指導者と子供たちの間に存在する)。それに受験間際の子供たちを僕の勝手な逃走のために動揺させることにでもなれば、僕は生涯自分を恨むことになる。
 子供たちを教えるときだけ逃走を中止する? もはやそれは逃走でも何でもない。逃走、僕は新しい旅(逃走を新しい旅と言っていいのか正直わからなが)を始めたのだ。ここで引き返すことはできない。
 
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