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波の音が聞こえる場所で
第2章 JR上野駅と演歌についての考察、そして子供たち
 腕組みをして僕は考えた。ずっとずっと考えた。JR高崎駅を過ぎたということもわからなかった。目を閉じたり、目を開けたり。天井を見たり窓のカーテンを見たり。どんなに思案しても解決策が浮かばない。
 解決するということ、それは僕の新しい旅をこのまま前進させることであり、子供たちの未来にも責任を持つということだ。この二つを確実に成し遂げるため僕は考える。
 考える……考える。
 新幹線が長い筒の中に入りこむのを感じた。ズボッというような音と空気が凝縮するような感覚。それでも僕は考え続けた。解答は必ずある。僕はいつも子供たちにこう言っていた「落ち着いて考えろ。必ず解けるから」と。その言葉を今僕自身に問いかけてみる。
 僕は腕組みをしたままでいる。そう言えば空腹感もこのときだけはどこかに行っているみたいだ。難問が解けそうな気配なのか、僕の心はとても落ち着いていてぎゅっと締め付けられるような圧迫感が全くない。答えが出そうだ。数十秒……数分……時間の経過だけはわかるがそれがどのくらいなのか判断できない。
 新幹線が長い筒の中をすぽっと音を立てて出た。車体も何かの圧力から解放された感じで軽くなったようだ(実際のことはわからないが)。そして……。
「直江!」
 大きな声で僕は友人の名前を言った。僕を中心として半径五mくらいの席に座っている乗客は、間違いなく僕の絶叫に近い声を聞いただろう。
 山名ではない、権藤でもない。直江こそ本当の友人だ。友人とは信頼できる友のことを言う。
 大学に入って最初の英語の授業だった。授業が終わり、席を立とうとした僕に直江は「バスケやってた?」と声をかけてきたのだ。
「どうして?」
 人見知りの僕はぶっきらぼうにそう言った。
「背高いしさ、悔しいけどジョーダンワンのシカゴカラーがめちゃめちゃ似合ってるんだよね。穿いてるのリーバイスの501だろ? 背が高い奴って似合うんだよね、悔しいけどさ」
 直江が言う「悔しい」という言葉が妙に引っかかった。ちなみに直江の身長は僕より十㎝くらい低い。
 それから僕と直江は大学の第一食堂に行って二人でカツ丼を食べた。
「直江洋介、新潟県の出身で高校時代は僕もバスケやってたんだ」
「坂口翔。僕はFだったけど君は?」
「僕もFだ。高二のとき県大会ベスト8まで行ったけどそこまでだった」
「僕の高校も都大会ベスト8止まりだ」
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