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波の音が聞こえる場所で
第8章 取り調べと化した久須美の面接についての一部始終
「よいしょと」
 久須美はそう言うと事務所のソファに腰を下ろした。
「……」
「坂口君もさ、遠慮なんかしなくていいから座ってよ」
「失礼します」
 面接希望者を立たせて面接するなんて聞いたことがない。つまりだ、遠慮しなくていいからなんて言葉は必要ない。僕は失敗したかもしれない。そしてめっちゃ後悔した。
「はいこれ飲んで」
 久須美はテーブルの上に缶コーヒーを二つ置いた。
「……」
 僕はテーブルに置かれた缶コーヒーをガン見した。見たことのないデザイン。黒っぽいからおそらくブラックなのだろう。
「これさ、五十八円なのよ。僕って買い物上手なのかな」
 久須美は缶コーヒーのプルトップを引くと、それに口をつけてごくりと一口飲んだ。
「……」
 何となく手が伸びない。体の中にいる何かが、僕にそれを飲むなと警告している。
「ほう、こういう味のコーヒーもあるんだね。坂口君も飲んでよ」
「頂きます」
 ホットでもなけれなアイスでもない中途半端な温度のコーヒー……? 僕はコーヒーを一口喉に流し込んだ後、手にしている缶を見てこのコーヒーを製造しているメーカーを確認する。近畿地方にある一度も聞いたことがない会社の名前を僕は発見した。
「坂口君、どう?」
「どう?」
「美味い?」
「はぁ……コーヒーですね」
「はぁ、コーヒーか。君面白いことを言うね」
「……」
 じゃあ、はっきり言ってやる。最初醤油を極限まで薄めような味が僕を襲った。そして数秒後コーヒー豆ではない、間違いなく人工的な香りが鼻孔を通った。困ったことにその匂いが鼻孔に残ったまま出ていってくれない、みたいなコーヒーだ。簡潔な言葉で表すと不味いということになる。五十八円に期待してはいけない……のか。
「坂口君、もうさ、面接半分終わったよ」
「えっ?」
「だって君正直なんだもん。嘘つけないでしょ」
「……」
 僕だって嘘はつく、でも久須美がそう言うのだから僕は黙っていることにした。
「坂口君の口に合わなかったみたいだね。まぁ僕の口にも合わないからあいこか?」
「……」
 あいこってここで使う言葉じゃないだろ。
「坂口君を半部わかっても面接はしないといけない。わかるよね?」
「はい」
「ところで坂口君、何で新潟なの? 何で弥彦線なんかに乗ったの?」
「話すと長いんですが」
「全然ノープロブレムだから」
「上野駅で」
 面接開始。
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