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波の音が聞こえる場所で
第2章 JR上野駅と演歌についての考察、そして子供たち
 バスケの話がしばらく続いた。「ミーハーだけど」と直江は断ってからレイカーズのファンだと言った。僕はレイカーズのファンがミーハーだとは思わない。人気チームが好きなやつらがみんなミーハーなわけではない……多分。
 僕がボストンのファンだと言ったら「渋いね」と直江は言った。「悔しいけど」「渋いね」という言葉を使う直江の方が断然カッコイイと思った。
 新潟県で二番目に大きな街に育った直江は、その街にあるN高校を卒業し、僕らが通っている大学に入学した。僕の卒業した高校とは違い、N高校は新潟県で一二を争う進学校なのだそうだ。直江は東北大学を受験したが、落ちてしまい第二志望で受けた大学、つまり僕が通っている大学に合格して入学を決めた。
 浪人することも考えたそうだが、若いときの一年を無駄にしたくないという理由で浪人することは止めたと直江は言った。
 おそらく、いや間違いなく直江は余裕で僕らが通っているR大学を合格したに違いない。僕は……、受験の後、性も根も尽き果てて三日ほど寝込んだ(まじで)。同じ大学に通うことになったが、僕と直江の間には恐ろしいくらいの学力差がある、絶対に。
 英語の授業があるときは三回に一回くらい直江と第一食堂で食事をした(三回に二回は山名と権藤。そして今それを僕は後悔している)。直江の話はいつも面白くて奥が深く、僕をいろいろな意味で刺激し、そして僕の乏しい教養を毎回膨らませてくれた。
 物知りな直江に僕はこう訊ねた。
「ひょっとして直江ってあの戦国武将直江兼続の子孫だとか」
「ははは」
 直江は大笑いした。そしてこう続けた。
「残念ながら違うよ。坂口、君で百一人目だ」
「僕で百一だなんて、よく数えていたな」
「いやいや数えてなんかいないさ。数えていたのは百人まで、それから数えるのが面倒なんで全部百一ということにしてるんだ」
「なるほど」
 僕は百一人が本当は何人いるのかそのとき想像した。
 遠い過去の思い出の中で今直江が輝いている。直江に頼るしかない。僕が世間を席捲していたあの病を罹ったとき、僕の代行で塾の講師を引き受けてくれた。素晴らしい授業だったらしく、僕が病から回復して塾に行ったとき生徒からこう言われた「今日は直江先生じゃないんですか?」僕が「違う」と言ったら生徒のほぼ全員の表情が曇った。やがてその雲は僕を覆って、僕の心に大雨を降らせた。
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