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正義と道徳のアクメ
第2章 生まれて初めて女性器に口をつけた!
 雲ひとつないドーム状の青空が見下ろしてくる午前十一時ごろのこと。
 啓子は新鮮な陽射しを顔の左側に浴びながら、ゴトゴトと各駅電車に揺られていた。陽の光とは種類の違う空調の生ぬるさに時おり寝落ちしかけたが、眠るのがあまりに勿体なかった。学が向かいのボックスシートからずり落ちそうになりながら眠りこけるなか、啓子は延々と続く田園風景を飽きずに眺めていた。
 品川から南へ向かうつもりが誤って北行きの電車に乗り、そのまま終点まで行こうという話になって今に至る。通勤ラッシュで混んでいた車内も、首都圏を抜けた途端にガラリと空いた。中腰で辺りを見回すと、同じ車両には自分たちの他に三人しか乗っていなかった。
「はぁ~っ…」
 これ見よがしにため息をつくが、学が目を覚ます気配はない。こんこんと眠っている彼をわざわざ起こすのも忍びなく、啓子は仕方なく昨晩学から聞いた話を再び思い出しはじめた。


 宗教狂いの家に一人っ子として生まれた学は、物心ついた頃から母と祖父母が盲信する教団の“正義”に僅かでも反すると家族総出で苛烈な体罰を与えられる環境で育った。
 学はそれを自身が背負うべき業だと受け入れ、文句ひとつ言わずに孤独な少年期を過ごした。
 大学に進学するとやっと友人らしきものが出来たものの、就職難のなか一部上場企業へ就職を決めたことで嫉妬を買い、全ての友人を失う。
 それも試練と捉えて一所懸命に働くものの、直属の女上司が何かにつけて学の正義と道徳を全否定する人物だった。
 それすら魂の研鑽だと耐え続けていたある日、通勤中に幼い子供を殴りつけている母親を見かけ、止めに入って遅刻したところ女上司に頭ごなしに激しく叱責され、ついに我慢の限界を超えた学は会社を飛び出してしまう。
「俺は、試練から逃げ出しちまったんだ。いわば罪人だ…家族に知れたら殺されるだろうな…だったらいっそ死のうと。でも、その前に───」


「あ…はぁっ…はぁんっ…」
 その話を反芻するにつけ、なぜか啓子は身体の芯が焦げるような劣情に駆られた。それは、とてもじゃないが抑えのきかないビターな甘さを帯びていた。
 しかめっ面で寝息を立てる学の股間へ伸びかけた指は空を旋回し、自身の腰元と胸元へ漂着する。啓子は再び中腰で車両内を見回すとスーツのタイトスカートをめくり上げ、ストッキングに包装されたパンティへ手首まで差し込んだ。
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