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正義と道徳のアクメ
第2章 生まれて初めて女性器に口をつけた!
 ドス黒い意思表明に花芯を焼かれた啓子は苦しげに腰を折り、タイトスカートの中央を押さえた。
「俺に考えがある…行くぞ、啓子さん」
「あっ…あぁぁっ!待ってっ…」
 駅前のロータリーに出た男女の背中を足早に追う学の後を、啓子は小鼻を赤く膨らませたままおぼつかぬ足取りでついて行った。


 その日の午後八時すぎ、ふたりは駅から数キロほど離れた繁華街の雑居ビルの前にいた。
 学に暴力を振るった男女はあの後車で教育シンポジウムの会場へ向かい、終わると繁華街のコインパーキングに車を停めて目の前の割烹居酒屋へダルそうに入っていった。
 入口には『xx学区教育委員会懇談会 御一行様』という歓迎看板が掲げられ、学と啓子は男女が出て来るのを待ち伏せていた。
「やっぱりあのふたり、教員だったね」
「フンっ…」
「ところで…襲うってどうやってするの?いいかげん教えてくれても良くない?」
「分かった。でも、これを見たらもう俺と行動したくなくなるかもな…」
 学はビジネスバッグのジッパーを半分ほど開くと、啓子に中を覗かせた。
 そこには電気カミソリ状の物体があり、先端の凹みの周辺に銀色の電極が牙のように六つほど突き出ていた。手に持つであろう下半分にはグリップの溝がつけられ、上半分には唐草模様と一体化した禍々しい鳩の刻印が刻まれていた。
 啓子は「ひっ」と息を飲むとバッグから飛び退いた。
「道義の雷(いかづち)っていう、俺の家族がハマってた『前進の村』って宗教団体のグッズだ。ま、平たくいうとスタンガンだな…」
「威力って…どのくらいなの?」
「あくまで“感化教育用”って名目だけど、最大出力にすると皮のぶ厚い猛獣を一発で気絶させられるって噂されてたな」
「そんな…」
「脱会を試みた幹部信者が数人これで行方不明になったらしいけど、試してみないことには何とも言えない」
「あっ、んぁぁっ…はぁっ…はぁぁっ…」
 啓子は昨晩、学の背中に無数のミミズ腫れのような火傷の跡があったのを思い出した。途端に腰はぬるく痺れ、化繊を乾いた吐息で焼くように学の胸板に深く顔を埋めた。
「俺が怖くないのか?」
「どうして…?」
「俺は昨晩あの場所で女を買ったら、これでクソ上司を“やる”つもりだったんだぜ…」
「そうなんだ…でも、ご家族は“やら”ないの…?」
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