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正義と道徳のアクメ
第3章 惚れた女の秘所がどんな味と匂いか詳しくレポートしろ!
「どう頑張ったってロクな人生を歩めないような奴は、あたしらみたいな有望な者の肥やしになるべきなんだ。タフに生きようよ。ねっ?」
 そして放り投げるように尖った鼻で茜空を仰ぐと、大股でメインストリートを歩きはじめた。男たちはその後を小走りで付いていった。
 凛々しさと慈しみ深さを同居させるノーメイクながらクッキリとした瞳は、生まれつき人の上に立つべき魅力を湛えていたものの───

「啓子さん…奴らだろ?北島カレンと二本の金魚の糞ってのは…」
「う、うん…」
「テレビ局勤務のクセに残業しねぇで帰れるなんて…奴らどんな立場にいやがるんだよ…」
「そう、だね…」
「奴ら、今晩も“やる”みたいだな…」
「………」
 学は『テナント募集』と張り紙のされた雑居ビル前の自販機の裏から顔を出し、通りすぎた北島カレンたちの背中を見つめた。啓子はビルの外壁と自販機の隙間に隠れるようにしゃがみ込んでいた。
 昨日の深夜、ふたりは盗難車と電車を乗り継いでこの町へ着いた。ここは啓子の生まれ故郷だった。
「よし、追うぞっ!」
 メインストリートに足を踏み出した学は、袖を引かれてつんのめった。引き止めたのは自販機の裏で膝に顎を埋めて震えている啓子だった。
「啓子さん、どうした…?」
「ごめんなさい…学さんの…ちょっとだけちょうだい…」
 啓子は丸い鼻先をうつむかせ、おぼつかぬ手つきで学のズボンのジッパーを下ろそうとしていた。
「おいっ、何してんだよ…?奴ら行っちまうって…」
「ダメ…もう無理…!お願い…ちょうだい…」
 手を振り払おうとするが、この町に着いてから啓子の様子が如実におかしくなったこともあって学はなすがままになった。
 啓子はジッパーから生煮えの肉棒を引きずり出すと、狂ったようにしゃぶりついた。
「………」
 学はどんどん小さくなる北島カレンたちの声を背に受け、初めて出会った夜に啓子に明かされた身の上話を思い出しはじめた。


 教員の両親の元に生まれた啓子は、素直で純真な子に育てたいという教育方針のもと手に取るもの全てに両親の検閲が入るような厳格な家庭で育った。
 同様の教育を受けた兄は早々に精神を病み、両親の歪んだ愛情は啓子ひとりに集中した。
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