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正義と道徳のアクメ
第5章 女上司の性器からは畳や襖のような風情ある芳香が立ちのぼる!
 子供の頃にこの道場に来たことがあると告げると、道場の責任者は素性もロクに聞かずに一泊たった五千円で迎え入れてくれた。すでに夜も遅かったのでこの日は食事だけ取り、翌朝早くから修行に参加する予定になっていたが、その前に道場を抜け出そうと考えていた。
「あぁぁっ!さ、最近の学さん…激しいっ…何か変…んあぁっ!」
 食事を済ませると自然とセックスに至ったものの、学は啓子が極道の愛人とその手下に生々しい凌辱を受けた事実を脳から排除出来ずにいた。その事実は日に日に鮮明さを増し、匂い立つ臨場感に苦しめられた。
 啓子と腹を割って話せる関係になった筈なのに、おぞましいまでの嫉妬心や詳細不明の加虐心を抱いてしまっていることを明かせずにいたのだ。
 それは、
「んあぁっ!ダメぇっ!またっ…またイッちゃうぅぅ…も、もうイったってばぁ…嫌ぁっ…狂っちゃうよぉ!」
ただひたすらに啓子を犯す…というこの晩のセックスにもありありと現れていた。
 学は立て続けに五回ほど射精すると布団の上へゴロリと身を転がした。啓子はすぐに寝息を立てて眠ってしまった。
(クソっ…!)
 室内のアナログ時計は零時すぎを示している。
 学はうだる疲労感に伸し掛かられながらも一向に寝つけず、大浴場が午前一時まで開いていたことを思い出すと浴衣を引っかけて部屋を出た。

 建てつけの悪いガラス戸を開き、無人の浴室へ入る。中には源泉と白湯の浴槽がひとつづつあったが、『露天風呂』と書かれた朽ちかけの木看板がかかった扉から外へ出た。
 露天風呂にはこの温泉郷特有の白濁色の湯を満たした岩風呂があり、濃厚な湯霧が夜空を曇らせている。奥には高く岩が積み上げられ、女湯との仕切りになっているようだった。
 学はかけ湯を使うと首元までどっぷりと湯に身を浸した。そして、会社を飛び出してから今日に至るまでのことを克明に思い出しはじめた。
 啓子と出会ったことで死ぬことを先送りにしながら旅を続けているが、この先の見通しは全く立っていない。それに、これまで多くの違法行為に手を染めてしまったがどうするべきか…。
「はぁっ…」
 現実逃避だと分かってはいたものの、学はこの身に降り掛かる諸々を先送りにし、熱い湯に血を沸かされるひとときの生き心地に浸らずにいられなかった。
「いい気なもんね」
「はっ…?」
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