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正義と道徳のアクメ
第5章 女上司の性器からは畳や襖のような風情ある芳香が立ちのぼる!
 首筋への突然の声に肝を冷やし、学は腰を上げて恐る恐る背後を振り向いた。すると、積み上げられた岩を背に立つ均整の取れた女の裸体が湯けむり越しに透けて見えた。
 丸々とした乳房のたもとまでかかる長い黒髪と、濃いめの逆三角形を擁する豊かな腰から伸びる長い脚がうっすら認められたが、顔は見えなかった。ただ、その声には明確な聞き覚えがあり…しかし、身の毛もよだつその声の主は東京にいる筈であり、こんな温泉郷の宗教団体の道場の露天風呂にいる筈などなかった。
「飯野学さん、お久しぶりね…」
「た…」
 声の持ち主が心当たりの人物だと確信するなり、のんびりくつろいでいた逃亡者の男根は急激に縮んで体内へ吸い上げられた。
 女の影は湯へ足を入れ、湯けむりのカーテンを薄くしながらこちらへ近づいてくる。ついに、学にとっては悪夢そのものの美貌が視界に飛び込んでくる。
「高島課長…なぜ…あんたがここに…?」
 くっきりと太い上がり眉と並走する二重まぶたに、柔らかく下を向く鷲鼻とそれを掬う肉厚の唇が卵型の輪郭に綺麗に収まっている。その女は間違いなく、直属の上司だった高島美鈴その人であった。
 アイドル女優並の美しさゆえ社内にファンクラブが自然発生するほどであったが、入社以降苛烈な指導・叱責を受け続けていた学にとっては、この切り立った美しさも恐怖の対象であった。
 そんな美貌に加えて責め立てるように突き出した豊乳、せっつくように急カーブに抉れた腰元、白濁色の雫をポタポタと垂らす濃いめの筆先と、初めて目にする鬼軍曹の完璧な恵体から学はたまらず顔を背けた。
「それにしても、ちょっと叱っただけで会社を飛び出すなんて…『前進の村』の説く正義観と道徳観からしたらあなた、『道義の雷』モノよ?」
「な、何だってっ?まさか、あんたも…」
 美鈴は表情を変えずに長い髪をまとめ上げると、クルリと背中を向けた。
「う、それはっ…」
 そこには、学の背中と同じくのたうつミミズのような火傷の跡が無数につけられていた。
「この道場にもよく通ったものだわ。もしかしたら子供の頃、あなたと顔を合わせてたかも知れないわね…」
 学は逃げるように湯から出ると石床に尻餅をつき、茹で上がった男性器と共にガックリと頭を垂れた。
 美鈴は首を振って手放した髪を羽ばたかせ、湯から上がってライトアップの柔らかな光を全身に受けた。
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