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正義と道徳のアクメ
第7章 これだけ顔を寄せ合って唇が触れなかったことがあっただろうか!
 啓子がようやく口を開くも、川上氏に深く底を搔かれて言葉の続きを継げない。
 石化したように立ち尽くす迷い子の素肌に、手入れの行き届いたケミカルな感触の肌を寄せて川上夫人がしなだれかかってくる。
「あぁんっ…生意気で不器用そうな子…私…あなたみたいなぶっきらぼうな子が大好物なのぉ!」
 さらに長く突き出した舌で学の乳首へ唾液を塗りたくる。
「夫人にもお気に召していただき光栄です」
 夫人には不自然なほどシミもシワも見当たらなかったが、怒張をさする手の甲の質感は啓子を組み敷く夫とさして変わらぬ年齢を感じさせた。
 執拗に掘り下げられながら啓子は、まどろんだ瞳に学の顔を映す。
「もう、学さんの重荷にならないから…んあぁっ!迷惑かけないから…!んうぅ~っ!」
「め、迷惑とか重荷だとか…さっきから何言ってんだよ…」
「ふふふっ…この奥~の方に気持ちイイ箇所を見つけたんだねっ?隠さなくても良いんだよ…イイ子だイイ子だ、流石はパパの子だ…」
 溶けかけのチーズのような腑抜けた顔で架空の娘を掻き回す毒父が、腰のスピードを元どおりに上げる。啓子は固く目を閉じて親指を噛み、見知らぬ退廃の闇へ真っ逆さまに落ちてゆく。
 学の耳元へ代表が囁く。
「もともと君たちが我々のことを知ってると思って、こんなやり方になって済まなかった。実は、我々は───」

 代表の説明によるとこのグループホームは、元犯罪者や各種虐待被害者など社会生活が困難な人間の駆け込み寺と同時に完全会員制の性的サービスを行っており、その売り上げの全てを運営費と各個人の貯蓄に充てているという。
 代表は青色吐息で啓子に溺れる川上氏と、学の股ぐらに嬉々として顔を押し込んでいる川上夫人を手のひらで指し示す。
「川上さんご夫妻はこの町の大地主で、このグループホームの特別顧問でもあるんだ。はじめは私も真っ当に運営費を稼ごうとした。だけど、真っ当なやり方じゃココで暮らす全員を“ちゃんと救う”にはとても足らなかった…」
 代表の眼鏡の奥の冷え切った瞳にほんの一瞬、肉食獣のような獰猛さが灯る。
 学の背中に火照った柔肉を押し当て、五月が抱きかかってきた。
「ってか、学さんたちも何か犯罪犯して逃げ回ってるんでしょ?」
「し、知ってたのか…」
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