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正義と道徳のアクメ
第8章 (最終話)何だか、新婚初夜みたいだね!
 世間的にはクリスマスイブと呼ばれる日の前日の、やたらと雨音の激しい午前二時ごろのこと。
「あぁん、動いちゃダメですってぇ…」
「おいっ!ちょっ…そこは苦手だって言ってんだろ…」
「あーっ…ヒクヒクしてる…もしかして感じてくれてるんですかぁ?」
「だから…あうぅ!な、何をしてんだよぉ…やっ!やめろって!」
「うふふっ、初めて出会った時の夜ごっこ」
「だったら、俺も仕返ししてやるっ…」
「きゃあぁっ…!ヤダっ、ソコは汚いからダメぇ…」
 こんなつもりじゃなかった…という以上に、思ったのと全然違った。あと、こんな生活はもっとあっさり終わってしまうものだと思っていた。
 俺と彼女はとある限界集落の中のひときわ老朽化した公共住宅の一室で、とてもじゃないが言葉に出来ない箇所に互いの舌を這い回らせていた。雨音が激しいことを良いことに、普段よりも大きな声を上げて裸で絡み合っていた。
 この部屋の場所については、言えない。どこから情報が漏れるか分からないから。ただ、国内某所の大歓楽街の裏手の限界集落の辺りだとだけ言っておく。
 ともかく今夜は雨の音がやかましくて全く眠れずに、この時間まで延々とセックスをし続けていたんだ。

「おぉいっ!それは反則だろってぇっ…」
「あっははははっ!」
 啓子は自ら唾液まみれにしたその箇所へ、いきなり指を突っ込んできた。身体をのけぞらせた学は万年床の脇のカラーボックスに踵をぶつけ、上に置いていた『希望の千両箱』と手書きで書かれた円柱型のクッキー缶が畳の上に落下し、数枚ごとに輪ゴムで括られた一万円札の束が中からこぼれた。
 隣の部屋では、やけに肌ツヤの良い短髪の老女が壁から漏れてくる淫声に耳を立て、パジャマ代わりの灰色のトレーナーの上から豊満な胸元をいじくっていた。
「なぁ、そっちじゃないとこ舐めてくれよ…」
「じゃあ、私のもして…舐めっこしよっ?」
 老女の目の前のテーブルにはスマホが置かれ、身体じゅうに和彫りのある坊主頭で痩せた中年男が全裸でタバコを吸う画像が表示されていた。
 学たちが漏らす声のボルテージと比例し、老女の息遣いと指づかいは激しさを増してゆく。


 学と啓子はグループホームから逃走した後、三ヶ月ほどは各地を転々とホテル暮らしをしていた。
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