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正義と道徳のアクメ
第1章 とても言葉に出来ない箇所に彼女の舌が這い回ってるんだ!
「あ、また訳の分からないこと言っちゃった…ごめんなさい…」
「いや、俺も似たようなこと考えてたから…」


 女がつたなく絡めてこようとする指を、男は力強く捕まえた。ふたりは手綱を頼りに全力でこの悦びを貪りあい、笑い慣れていない不格好な笑顔を突きつけあった。
 男は下唇よりも少しだけ厚めな女の上唇を強く吸い、その顔を陶酔にすっかり緩め切っていた。
「あぁぁっ!どうしよう…気持ちいいっ…本当に気持ちいいのぉ…!」
「お、俺も…メチャクチャ気持ちいいっ…!」
 情に目覚めたばかりの女は全身を桃色に染め、渦潮に飲まれたかのように時おりその身を翻した。
 オスになりたての男はそれを必死に追った。
「も、もう出そうなんだけど…もう少し頑張った方がいいかな…?」
「あぁぅっ!そんなつまらないこと気にしないで…好きにして…うぁんっ!気持ち良くイっていいから…」
「う…うぅっ…うあぁっ!」
 間髪入れずに男は二度目の射精に至った。
 そして、ふたりは静かな海の底でゆっくり重なり合った。


 ベッドの中央に形成された真っ赤な水溜りをあぐら座と体育座りで焚き火のように囲み、男と女は涼しげな沈黙に身を置いていた。
「何だかさ?」
「何だかさ?」
 会話の鼻先がぶつかる。
「そっちから」
「いえいえ、そっちから」
 譲り合っているうちにまた沈黙が訪れるが、男はやけに低音をきかせて話しはじめた。
「俺…生まれて初めてこの世の中は捨てたもんじゃない…って思えた…」
「それは、初めてのセックスが叶ったから?」
「いや…」
 ホテルに入った時から点きっぱなしだった空調の音が、今ごろになってやけにゴォーーーと耳につく。室温のせいなのか目の前の女のせいなのか、男の手のひらは汗でベットリと濡れていた。
「き、君のような人に出会えた…から…」
 女は不思議そうに、そして少し疑い深そうに首を傾げる。
 男はこんなセリフが自身の口から飛び出した悶絶を打ち消すように慌てて舌を回す。
「っていうか、話しやすいんだ…こんなに普通に話せる人は…特に女性には…今までいなかったから…」
 女はさらに深く膝を抱えると、男の顔を下から覗き込んだ。
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