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騎士団長は恋に溺れてはいけない──それでも君を抱きしめた夜
第1章 この想いは、ただの憧れ
最後の一撃を決めた瞬間、セラは剣を握ったまま小さく膝をついた。

だが、その眼には敗北も苦痛もなかった。

あったのは、ただ一つ──

「絶対に騎士になる」という、燃えるような執念。

俺は思わず、呼び止めていた。

「セラ・フォルネリア。」

彼女が顔を上げる。髪がふわりと揺れ、陽に透けたその瞳に、俺の心が一瞬だけざわついた。

「合格だ。」

「えっ……」

驚きに目を見開いた彼女の頬には、汗が伝っていた。

「おめでとう。今日から騎士だよ」

ほんの刹那、時間が止まったような気がした。

──その笑顔。

汗に濡れ、頬を赤らめながら、弾けるように笑った彼女の姿を、

俺はたぶん、二度と忘れられない。

胸の奥で、何かが鳴った。
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