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騎士団長は恋に溺れてはいけない──それでも君を抱きしめた夜
第1章 この想いは、ただの憧れ
その瞬間──

「っ……あっ、えっと……」

セラの体がピクリと震え、わずかに肩がすくんだ。

見上げてきた瞳が、ほんの一瞬、俺の目と重なった。

頬はうっすらと紅潮し、睫毛が震えている。

息を呑んだのは、彼女だけじゃなかった。

手のひら越しに伝わる細くて柔らかな感触。

熱を含んだ肌。かすかに香る、汗混じりの甘い匂い。

(……まずい)

一瞬、喉が鳴った。

弟子に手を添えて構えを直す──ただそれだけの動作だったはずなのに。

「……構えは、こう」

言葉が掠れたのが、自分でも分かった。

「はいっ!」

セラは視線を逸らしながらも、懸命に返事をする。

けれどその剣の先が、微かに震えているのを俺は見逃さなかった。

そして何より──
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