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第1章 痴漢されて

「では、振り出しに戻った。どうする？」

と、創志が話すと、

「齋藤とあの女を引き離すしかない」

と、篠塚が難しい顔で話すと、

「そうだな。それしかないが、方法があるか？」

と、創志が聞いた。

「物理的に二人の間に割り込むしかないが、齋藤のあの体格を押しのけるのは簡単じゃない」

と、崎浜が言うと、

「そうだな。110キロだろ。押し返されるぞ」

と、創志が苦笑いした。

「となると、あの女と扉の間に入るかだが、あの扉が開くのは一度だけしかない。◎◎駅だ」

と、隅田が話した。思い出す風の残りのメンバー。

「そうだな。あとは、いつもあの女が下りる駅だ」

「そう。だから、ワンチャンスで、俺たちが乗り込み、あの女の背後を取る。今まで見ていたが、いつも◎◎駅から乗る乗客は、齋藤の存在に圧倒されて、反対側に寄っているが、怯まずに踏み込めば、何とかなりそうだ」

「以前と同じで、俺がスマートフォンで動画でも見ているフリをしながら、お前らが痴漢をしているところを撮影して、感じさせてしまえば、こっちのものなのだが、そこまで、齋藤が静観しているとは思えない。動き始めるはずだ。その対策も考えないと」

真剣な討議が続いた。

「そうね。◎◎駅で乗り込むときに、私が齋藤とあの女の間に割り込めば、女の私を押しのけるかしら。女だからと油断するかもしれないわ。私があの二人の間に入れば、齋藤がこっちの動きに気付くまでに時間が稼げるし、もし、あの女が助けを求めても、助けられるかどうか。それに、そもそも、ガードしているつもりかもしれないけど、実際、あの状況で痴漢に遭って、『今、痴漢されている』って伝えらえれるものかしら」

と、志穂が話した。

「というと？」

志穂の話の続きを求める、もしくは説明を求める感じで、篠塚が聞いた。

「意外に、痴漢に遭ってときって、助けを求めにくいのよ。高校時代の同級生は、横に父親がいても助けを求められなかったくらい、ハードルが高いの。気が付いてくれるのを待つという感じになるのか、そのあたりはわからないけど。ただ、一気呵成に行かないと、冷静な判断をされると、助けを求める確率は高まるわ」

と、志穂が話すと、頷くメンバー。