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第1章 痴漢されて

「あと、そもそも論だけど、痴漢が嫌なのに、どうして◆両目なのという疑問もあるのよ。最初から齋藤と一緒ならわかるわ。齋藤は女性専用車両に乗れないから。でも、齋藤は後からという話よね。痴漢が嫌なら、最初から女性専用車両に乗ればいいのよ。いくら、最後尾で歩かないといけないとしても。◆両目って、デンジャラスゾーンでしょ？」

と、志穂が聞くと、

「混み具合といい、いつも男性率が高い車両です。それこそ、志穂さんが乗り込んで、志穂さんが痴漢に遭わないとも限らないというくらい、痴漢の発生率も高いと思います」

と、事情に詳しい崎浜が答えた。

「だとしたら、その女、痴漢されたいとでも思っているんじゃない？っていうか、だとしたらとんでもないマゾよね」

と、志穂が笑った。

「しかし、それじゃ、齋藤にガードを頼んでいることと整合性が取れないぞ」

と、夫の創志が反論した。

「それもそうね。でも、後付けでしょ。コミュニティでも、危険だと何人か言っても、撤回していないわけだし、齋藤という正義マンが、ガード役を買って出たというのが正解じゃないの？そして、その男があんなイケメン男子だから、甘えているって展開だと思うけど」

と、志穂が夫の反論にさらに反論したが、それが正解。

「ということは、齋藤とあの女は不倫関係？」

と、隅田が飛躍して聞いた。

「それはわからないわ。でも、どうかしら。それだったら、もっと電車の中で距離が近いわ。あの距離感は性関係はないわ」

志穂が答えると、

「そうだろうな。あの感じだと」

と、創志も頷いた。

「痴漢行為をした場合の、あの女の反応はどういう感じだろう？」

創志が志穂に聞いた。

「そうね。あの女は痴漢されることを望んでいるはず。でも、あの男の前でされたいかどうか。と、助けを求めて、齋藤と痴漢が対決することを望むかどうか。痴漢が多数であることをわからせれば、齋藤と多人数の痴漢が対決する可否を考えると思うわ。いくら体格が良くても一対多数でと考えたら躊躇すると思うし、ガードすると言って守ってくれているのに、痴漢された場合って、言い難いと思うわ。ある意味、ガードできていないというのと同じで、責める感じになるから。それに、痴漢されたい女って、欲求不満なのよ」

と、志穂は言って笑った。