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第1章 痴漢されて

「ということは、痴漢されても、黙っている可能性が高いということですね」

隅田が顔をほころばせながら言った。

「可能性は高い。でも、絶対じゃないけどね」

と、志穂はあえて、そこで止めた。

「リスクはあると」

と、隅田が言うと、他のメンバーも、確認した感じ。

「あるけど、やる価値はあると思うわよ。私が考えた作戦を伝えるわね」

と、志穂が作戦を話し始めた。

「私が▶▶駅から、齋藤とあの女と一緒に乗る。扉側にいるあの女の横にいて待機するわ。そして、◎◎駅まで来て、こちらの扉が開いたら、あなたたちが乗り込んでくる。私は、あなたたちに押されたように、あの女と齋藤の間に押し込まれて行く。あなたたちは私を押す感じで乗り込み、私を二人の間に押し込みつつ、あの女の周りに半円を描く。これであの女の逃げ場はないわ。そして、私は齋藤の前で齋藤の方向いて立つの。齋藤を監視するため。もし、あの女が助けを求めて、齋藤がが力づくでも動こうとしたら、私が反対に、齋藤を掴んで『この人、痴漢です！』って叫ぶわ。あなたたちは、齋藤を痴漢として取り押さえるの。わかった」

隅田、崎浜、篠塚が頷いた。最後に、創志が頷くと、決まりという感じだった。

部屋の引き戸を使って、シミュレーション。

若い隅田が先頭で、篠塚、崎浜、創志の四人が志穂を盾にして、齋藤とオリザの間に入っていくという展開。

◎◎駅の時点で、相当な混み具合のはず。あとは、押し込む余裕があるかどうか。混んでいなければ、齋藤が動きやすくなって、それはそれで拙いが、混み過ぎて四人が乗り込む余裕が無ければ、無いで拙い。そこに限っては運任せという部分もあり、万が一、空いている場合は、志穂がLINE連絡することにして、混み具合が酷い場合や、◎◎駅で乗る人数が多すぎて、作戦決行が難しい場合は、乗ること自体を見送ることに決めた。

あとは、決行あるのみ。