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第1章 痴漢されて

「落胆した」

と、オリザが受けた。オリザも迷っていた。痴漢に刺激された身体は相変わらず疼いていた。

「そうですね」

と、素直に齋藤は応じた。

「どうして、私が浮気しないかわかる？」

オリザが齋藤の顔を見て聞いた。

「どうして」

と、言って考え込む齋藤。

「わからない？」

と、重ねてオリザが聞いた。沈黙で答える斎藤。視線はオリザを見つめていた。

「本気になってしまうから。浮気なんて、たぶん、私には無理。たとえば、齋藤くんみたいな真面目な男の子だと、好きになったら本気になるでしょ。本気で好きになられたら、どうしても、本気になってしまうわ。浮気では終われないと思うわ」

と、オリザが説明すると、わかったのか齋藤が頷いて、少し考えて、

「僕が本気にならなかったらいいんですか？」

と、聞いた。

「そんなこと、できる？無理でしょ？」

と、オリザが笑うと、

「そうかもしれないけど。本気になっても本気に見えなかったらいいんじゃないですか？」

と、言い出した。『見えなかったら』という意味がオリザにわからなかった。

「旦那さんがいるから本気になるわけにはいかないってことでしょ？今の僕には、彼女気取りの女の子がいます。その子が彼女ということにして、遊びで織姫（オリザのHN）さんと浮気しているという形なら、旦那さんも目くじら立てないと思うのですが」

と、齋藤が説明した。

「でも、齋藤くんは、本気になるんでしょ？そうしたら、私も本気になってしまうわ」

と、苦笑いで、オリザは提案を断った。でも、内心、妙案なようにも思えた。彼女持ちの男と関係しても、夫は、お互いに遊びの関係と流すかもしれない。

「本気にならなかったらいいんですか？」

喰らいつくような目で齋藤が質問した。「そうよ」と思ったけど、

「無理だと思うわ。齋藤くん、真面目だから」

と、オリザは笑った。