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第6章 余韻から現実へ

「でも、アレをしていて、しかも、いつも一緒なら、彼氏彼女と思うのは普通だし、咲良ちゃんが自分が齋藤くんの彼女だと思い込んだのも仕方がないと思うわ。わたしだって、その立場ならそう思うもの」

オリザが齋藤に指摘した。

「そうでしょうね。どこかで、線を引くべきだったのかもしれません」

齋藤が溜息を吐いた。

「齋藤くんは、どんな女性なら彼女にしたいって思えるの？」

オリザが聞くと、

「そうですね。大人の女性というか、咲良みたいに幼い感じではない方がいいです。そう、可能なら年上がいいです。咲良は、胸もなくて、尻も小さいから、まるで中学生とか、そういう年齢に見えるから、していても罪悪感があるし、下手をしたら夜、コンビニとかに行くと、警察官が職務質問をしてくることもあるので、せめて、大学生には見えるくらいの雰囲気が欲しいです。というか、やはり、大人の雰囲気。そう、オリザさんみたいな」

と、齋藤が話した。オリザは頷いて、

「でもね。わたしも背が低いし、胸も大きいわけじゃないし、それこそ、大学時代は幼く見えたと思うわ。ここだけの話、夫は少しロリコンの気があるのよ。だから、大学を卒業したばかりの私と結婚したの。夫は『不思議の国のアリス』のアリスが好きだったから、新婚時代は、水色のワンピースにエプロンって格好で家事をしていたわ」

と、笑った。オリザの言葉を聞きながら、齋藤はその絵を想像した。似合いそうだと思った。そして、あの家を思い出した。不思議の国のアリスに出てきそうな家。そして、庭。

「オリザさんは、旦那さんにとっては、アリスだったということですね。だから、あの家、あの庭なのですね」

齋藤が話すと、オリザが、

「そうよ。夫が結婚生活を過ごすために建てた家。アリスを迎えるために建てた家。そして、庭。だから、私はアリスになりきる必要があったわ。言っては何かもしれないけど、わたしもロリータファッションが嫌いではなかったから、抵抗は少なかった。でも、さすがに、32歳になった今は無理ね。ま、夫も滅多に帰宅しないし、そんな恰好をすることも減ったけど」

と言って笑った。