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鬼灯の寵愛
第1章 幾千の時を越えて
「姫様、あのようなみなしごと関わってはなりませぬ」
偶然外に見かけたのは、村で浮いていた少年。名は、丁。
自分は村長の娘。姫と呼ばれていた。
「彼は、如何ような成り行きでこの村に?」
「みなしごはみなしご。それ以外の何者でも御座いませぬ。姫様、どうかごゆるりと」
世話係の女は、会話すら成り立たないまま部屋を出て行った。
――自分が気が付いた時には、病と向き合う毎日だった。
調子をこじらせた時は、数日間熱に唸される。
調子が良い時でさえ、布団から起きて少しだけ家の中を歩く程度だ。
村の事など、村長の娘だというのに全く分からない。
一歩も外に出た事がないため、どんな人間が住んでいるのかさえ分からない。
話し相手が欲しいと思っても、友達を作る事も叶わない。
たまに遠くから聞こえてくる子供達の笑い声が羨ましかった。
どんな人なんだろう? どんな話をしているんだろう?
こんな体だから走り回れなくても良い。
ただ、話し相手になってくれる友達が欲しい…………
そう考える時に浮かび上がってくるのは、関わってはいけないと言われたみなしごの事。
たまに外に見かけるだけだったが、その姿は妙に印象に残るものだった。
恐らく、独りでも生きていく姿に惹かれていたんだろうと思う。
自分が寂しがりなのは、中途半端に家族の温もりを知ってしまっていたからなのだ。
彼は、家族の温もりを知らないのに真っ直ぐに生きている。
自分は、知ってしまったが故に孤独感に苛まれていた。
彼の心の強さが羨ましかった。だから、自然と惹かれていた。
同じ孤独だが、正反対の孤独を抱えている者同士。
――傷の舐め合いかもしれない。
「あの、そこの貴方……――――」
偶然外に見かけたのは、村で浮いていた少年。名は、丁。
自分は村長の娘。姫と呼ばれていた。
「彼は、如何ような成り行きでこの村に?」
「みなしごはみなしご。それ以外の何者でも御座いませぬ。姫様、どうかごゆるりと」
世話係の女は、会話すら成り立たないまま部屋を出て行った。
――自分が気が付いた時には、病と向き合う毎日だった。
調子をこじらせた時は、数日間熱に唸される。
調子が良い時でさえ、布団から起きて少しだけ家の中を歩く程度だ。
村の事など、村長の娘だというのに全く分からない。
一歩も外に出た事がないため、どんな人間が住んでいるのかさえ分からない。
話し相手が欲しいと思っても、友達を作る事も叶わない。
たまに遠くから聞こえてくる子供達の笑い声が羨ましかった。
どんな人なんだろう? どんな話をしているんだろう?
こんな体だから走り回れなくても良い。
ただ、話し相手になってくれる友達が欲しい…………
そう考える時に浮かび上がってくるのは、関わってはいけないと言われたみなしごの事。
たまに外に見かけるだけだったが、その姿は妙に印象に残るものだった。
恐らく、独りでも生きていく姿に惹かれていたんだろうと思う。
自分が寂しがりなのは、中途半端に家族の温もりを知ってしまっていたからなのだ。
彼は、家族の温もりを知らないのに真っ直ぐに生きている。
自分は、知ってしまったが故に孤独感に苛まれていた。
彼の心の強さが羨ましかった。だから、自然と惹かれていた。
同じ孤独だが、正反対の孤独を抱えている者同士。
――傷の舐め合いかもしれない。
「あの、そこの貴方……――――」