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後宮艶夜*スキャンダル~鳥籠の姫君は月夜に啼く~
第2章 家出
入内してひと月が経ったある夜、芳華は自室で一人、竪琴をかき鳴らしていた。幼い頃から学んだ腕前は今や、かなりのものである。
と、凜鈴が下裳(スカート)の裾を蹴立てるようにして飛び込んできた。
「お嬢さま」
後宮に来てからもずっと変わらず仕えてくれる凜鈴はたった一人の心許せる存在だ。その凜鈴の頬が紅潮している。
「なに、どうしたの?」
「たった今、知らせが参りました。皇帝陛下がこちらへお越しになるとのことです」