この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
後宮艶夜*スキャンダル~鳥籠の姫君は月夜に啼く~
第16章 番外編【美しき皇太后と若き皇帝】
「義母(ははうえ)上」
意気揚々と弾んだ声に、紫蘭はは微笑み、そっと振り返る。
「ここにおいででしたか」
若き皇帝は破顔して真っすぐに紫蘭に向かって歩いてきた。
今、紫蘭が立つのは浄心院の牡丹園である。
名の通り、歴代皇帝の后妃たちが皇帝亡き後、心浄らかに静かに亡き夫の菩提を弔いつつ余生を送る場所。
今、牡丹園は大輪の牡丹たちが盛りと群れ咲いていた。さながら、濃いピンクの花が燃えさかる炎のようにも見える。
ここは紫蘭のお気に入りの場所でもある。それは他ならないこの場所が亡き良人徳治帝と初めて出逢った場所だからだ。
ここに来ると、紫蘭は最愛の良人と過ごしたわずかな日々を思い出せることができる。「栄から義母上のお好きな石榴茶が届いたのです。それゆえ、一刻も早くお届けしたいと思って」
毎日のように足繁く浄心院を訪れる皇帝は少し照れたように笑う。
-ああ、本当によく似ていらっしゃる。
屈託なく笑う十八歳の皇帝は愕くほど徳治帝に似ていた。漆黒の髪と同じ色の瞳は幼いときから父親譲りであったが、長ずるにつれて、亡き人の残した忘れ形見の皇帝は徳治帝生き写しになった。
今、こうして牡丹園に佇む皇帝を見ていると、亡き良人が生きて帰ってきたかのように錯覚に囚われてしまう。
意気揚々と弾んだ声に、紫蘭はは微笑み、そっと振り返る。
「ここにおいででしたか」
若き皇帝は破顔して真っすぐに紫蘭に向かって歩いてきた。
今、紫蘭が立つのは浄心院の牡丹園である。
名の通り、歴代皇帝の后妃たちが皇帝亡き後、心浄らかに静かに亡き夫の菩提を弔いつつ余生を送る場所。
今、牡丹園は大輪の牡丹たちが盛りと群れ咲いていた。さながら、濃いピンクの花が燃えさかる炎のようにも見える。
ここは紫蘭のお気に入りの場所でもある。それは他ならないこの場所が亡き良人徳治帝と初めて出逢った場所だからだ。
ここに来ると、紫蘭は最愛の良人と過ごしたわずかな日々を思い出せることができる。「栄から義母上のお好きな石榴茶が届いたのです。それゆえ、一刻も早くお届けしたいと思って」
毎日のように足繁く浄心院を訪れる皇帝は少し照れたように笑う。
-ああ、本当によく似ていらっしゃる。
屈託なく笑う十八歳の皇帝は愕くほど徳治帝に似ていた。漆黒の髪と同じ色の瞳は幼いときから父親譲りであったが、長ずるにつれて、亡き人の残した忘れ形見の皇帝は徳治帝生き写しになった。
今、こうして牡丹園に佇む皇帝を見ていると、亡き良人が生きて帰ってきたかのように錯覚に囚われてしまう。