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DIABOLIK LOVERS ~Another~
第2章 生贄の価値
「……ありがとう、スバル」

背中から離れ、ミズキは彼に礼を言う。

「なんで止めたんだ。ぶん殴れば懲りて近寄んねぇかもしれねぇってのに」

スバルは振り返り、2人は向かい合った。

「そうだと思って止めたの。問題起こしたら、後でレイジに怒られちゃうよ?」
「ふん、知った事か。俺は、お前が人間に横取りされると思って腹が立っただけだ」
「でも、結果的には助けてくれた。来てくれて嬉しかったよ、スバル」

すっかり安心して、ミズキは満面の笑みを浮かべた。

「お…俺は、お前があんなヤローに触られてるのが気に食わなかっただけだ! 助けたつもりはねぇ!」
「分かったよ。でも、私は助けてくれたと思い込んでおくからね」

照れ隠しで荒くなる言葉に、本心が垣間見えた。
気が荒くて近寄り難い雰囲気を持つスバルだが、心は誰よりも優しくて聡明なのだ。
自分に対する彼の優しさが嬉しくて、また隠しきれていない彼が可笑しくて、ミズキはニコニコ笑っていた。

「危うく鞭打ちに処するところでしたよ」

そんなやり取りの最中に、冷静な声が投げ掛けられた。
声のするほうを2人が見ると、次男のレイジがこちらを見ていた。

「居たのかよ、レイジ」
「やぁ、レイジ。先生からプリントを預かってきたよ」
「有難うございます、ミズキ。貴女も忙しい身分ですね」
「そんな事ないよ。委員の仕事は結構好きだし」

レイジは眼鏡を持ち上げながら、ミズキをじっと見つめる。

「……何?」
「以前から、貴女に良からぬ連中がまとわり付いているという噂を聞いてはいましたが、本当だったとは」
「うん、まぁね……皆に迷惑かけたくなくて」
「教師を通じて、彼らにはお灸を据えておきましょう。貴女は居候とはいえ逆巻家の者。表向きは私達の妹のようなものですから」
「うん……それで懲りてくれれば良いけど」

拭えない不安に、ミズキの表情が曇る。
チッ、とスバルが舌打ちした。

「あんな奴ら、殴り倒してさっさと逃げりゃ良いんだよ……俺だっていつも傍に居てやりてぇけど……」
「スバル?」
「あ、ああ!? 何でもねぇよ! うぜぇ!」

顔を覗き込んでくるミズキを振り払うように、スバルは足音も荒くその場を離れて行った。
ミズキはその背中を不思議そうに見つめて見送った。

「……ふぅ」

やれやれ、といった様子で、レイジの口からため息が漏れる。
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