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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第10章 第三話・壱
お民に抱かれていた龍之助がむずかって、腕からすべり降りる。
「おっかちゃ。おいら、じっちゃんと遊んでくる」
 龍之助は元気よく叫ぶと、板場の方へと駆けていった。男は板場へと消えてゆく小さな後ろ姿を無表情に見つめている。
「あの、何かご用でしょうか」
 お民がおずおずと切り出すと、男はハッと我に返ったような表情になった。
「失礼。それがしは直参旗本五百石取り、石澤家に父祖の代よりお仕えする者にて、名を水戸部(みとべ)邦親(くにちか)と申す。主家では用人としてお仕え致しておる」
 久方ぶりに聞くあの男の名は、やはり、何か禍々しさをもって響いてくる。
 三年前、拉致したお民を手籠めにした時、嘉門はお民を再びどこかに囲って手許に置いておくつもりだった。しかし、あれから嘉門がお民の前に現れることはなく、日々は穏やかに過ぎていったのだ。
 それが、今になってまた石澤家の用人だという男が現れたのは何故なのか。嫌が上にも不安と恐怖が押し寄せてくる。
 そこで、男は態度も物言いも改めた。
「お方さまにはお初にお目にかかります。それがしはまだお方さまにご対面したことはこれなく、その昔、殿がご幼少の砌は守役として殿をお育て申し上げたこともござりましてな」
 お民が石澤の屋敷にいたのは八ヵ月間ほどである。その間、お民は〝妾御殿〟と呼ばれていた庭の離れに住まわされていた。必然的にお民が拘わったのは身の回りの世話をする侍女数人だけであり、家老の新田(につた)門戸(もんど)正(しよう)には一、二度逢ったことはあるものの、それ以外の石澤家に仕える家臣を見たことはなかった。
「あの―、そのお方さまという呼び方はお止め下さい。私はもうご当家とは何の拘わりもない、ただの町人でございますゆえ」
 その言葉に、水戸部の白い眉が動いた。
「これは異な事を承る。お方さまは、殿のご寵愛をお受けなり、その御子をお生み奉ったただ一人の女人、そのお方が当家と関わりないと仰せになられるとは承伏致しかねます」
「何を仰せになられたいのでございますか」
 お民は悲鳴のような声を上げた。
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