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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第13章 第三話・四
お民は溢れる涙をこらえ、眼を幾度もまたたかせた。こんな卑怯な男に涙など絶対に見せたくはない。
お民は唇を噛みしめ、膝の上に置いた手のひらを組み合わせて強く握った。
あまりにも強く噛んだせいか、口中にかすかに血の味がする。鉄錆びた味が口中にひろがり、お民はまた眼をしばたたいた。
それから四半刻ほど後、お民は湯浴みを済ませ、侍女の介添えで化粧をし、純白の夜着に着替えて嘉門を待っていた。
今宵、二人が夜を過ごすのは、最初に案内された座敷とはまた別の部屋であった。
流石に幼い息子が息を引き取ったその部屋で臥所を共にするのは嘉門も避けたのかもしれない。
今度は待つ間でもなく、嘉門は姿を見せた。
嘉門もやはり、見慣れた白一色の着流し姿である。
錦の褥を挟んで、嘉門が向かいにひっそりと佇んでいた。感情の読み取れぬ瞳がお民を見下ろしている。
また、こんにことになってしまった―。
お民は我知らず身体が震えるのを自覚した。
お民は唇を噛みしめ、膝の上に置いた手のひらを組み合わせて強く握った。
あまりにも強く噛んだせいか、口中にかすかに血の味がする。鉄錆びた味が口中にひろがり、お民はまた眼をしばたたいた。
それから四半刻ほど後、お民は湯浴みを済ませ、侍女の介添えで化粧をし、純白の夜着に着替えて嘉門を待っていた。
今宵、二人が夜を過ごすのは、最初に案内された座敷とはまた別の部屋であった。
流石に幼い息子が息を引き取ったその部屋で臥所を共にするのは嘉門も避けたのかもしれない。
今度は待つ間でもなく、嘉門は姿を見せた。
嘉門もやはり、見慣れた白一色の着流し姿である。
錦の褥を挟んで、嘉門が向かいにひっそりと佇んでいた。感情の読み取れぬ瞳がお民を見下ろしている。
また、こんにことになってしまった―。
お民は我知らず身体が震えるのを自覚した。