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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第4章 四
 嘉門がゆっくりと近づき、お民の身体を褥に横たえる。
 男の顔がお民の波打つ乳房の間に埋まった。生温かい舌がお民の桃色の先端や乳輪をゆっくりとなぞってゆく。
 お民の乳房を吸いながら、嘉門は膚に滲んだ汗の玉をもゆっくりと口で吸い取っていった。
―あの夢と同じ。
 お民は、乳房を口に含む男の口中の生温かさや、時折、先端を舐める舌の感触にたまらないおぞましさを憶えずにはいられなかった。
 こうやって、あの夢のように、お民は夜毎、男に犯され慰みものにされてゆく。
 自ら覚悟していたつもりでも、お民にとっては辛い日々だった。いっそのこと気でも触れてしまえば、夜毎辱めを受けることへの抵抗も哀しみも感じなくて済むのかもしれない。
 でも、お民には源治との約束があった。たとえどんなことがあっても、生きて惚れた男の許に戻らねばならない。込み上げそうになった涙を眼の裏で乾かし、お民は障子越しに閨に差し込んでくる蒼白い光に眼を向けた。
 東の空が白々と明るくなっているようであった。夜明けが近いのかもしれない。源治のことを思い出しながら、嘉門に抱かれるのはとりわけ辛かった。
 お民はつとめて惚れた男のことを考えないようにしながら、虚ろに見開いた眼でぼんやりと夜明け前の光を見つめていた。
 その間にも、嘉門の愛撫は烈しさを増してゆく。それを止めるすべもないままに、お民は苦痛とも快楽ともつかぬ微妙な感覚の中に全身を委ねながら、それでも意識だけは不思議なほどに醒めた頭でとりとめもないことを考え続けた。
 身体は嘉門の巧みな愛撫に馴れ、次第に歓びを憶えるようになっても、心だけはけして見失うまいとするかのように。
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