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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第4章 四
 頬が火照っているのが、湯の熱さのせいなのか、身も世もない心地のせいなのかは判らない。
 嘉門は常以上に貪欲にお民の身体をむさぼった。唇を深く結び合わせながら、嘉門の指がお民の身体の至るところをまさぐる。
 嘉門の膝に乗ったお民を嘉門が力強く引き寄せ、下から突き上げる。お民の解き流した黒髪がゆらゆらと藻のように湯の中を漂う。
 身体の芯を妖しく駆け抜ける快さに、お民の桜色の唇から、あえかな声が洩れた。
 そんなことを幾度繰り返しただろう。湯の中で何度か交わった後、嘉門はお民を抱き上げ、湯から引き上げると傍らの寝台へとそっと降ろした。
 贅沢に薄紅色の花びらを敷きつめた寝台の上に横たわったお民の豊満な身体がほの白く湯げむりの中に浮かび上がる。
 そっと包み込むと、形の良い双つのふくらみの先端が嘉門の愛撫に応えるかのように固く尖る。嘉門は乳房からへそのくぼみ、やわらかな腹部と次第に手を下へと移動させながら、恍惚(うつと)りと仰向けになったお民の裸身に見入った。
 嘉門の手の動きが徐々に速くなってゆく。
 いつもそうだ。この手によって、お民の身体はめざめ、歓喜の淵にいざなわれてゆく。この手がお民の中の官能を呼びさまし、奥の方で眠っている〝女〟という性(さが)に火を点すのだ。
 一度、ついた火は情事が果てるまで、いや果ててもなお、お民を身体ごと灼き尽くす。苦痛と快楽の狭間に追い込まれ、ついには、その向こう側の楽園へとお民を連れてゆく。
 ―それは哀しい性だった。愛してもおらぬ男に抱かれ、お民の身体は真の悦びにめざめたのだ。嘉門に抱かれて、お民は初めて自分の身体が女として開眼したことを知った。
 皮肉なことに、お民の中の女を呼び起こしたのは最初の良人兵助でもなく、最愛の男源治でもなかった。
 花びらの褥に腹這いになったお民に嘉門が覆い被さってくる。突如として深く強く一挙に最奥まで挿し貫かれ、お民はあまりの衝撃に眼の前が真っ白になり意識が飛んだ。
 滾り切った熱棒で奥をかき回される度に、呼吸すらもできぬほどの快感が下半身を妖しく駆け抜ける。
 その快感は同時に苦悶をももたらす。
 お民は果てしなく続く快楽地獄の中で、もがき苦しみ、喘いだ。
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