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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第1章 壱
 やがて、源治から〝お前に惚れているんだ〟と打ち明けられ、実は自身も源治の意外な素顔に魅せられ始めていたお民は男の気持ちを受け容れ、兵助の一周忌の法要を終えた後、晴れて祝言を挙げた。
 お民は、再び惚れた男と寄り添い合う日々を手に入れ、今、幸せだ。料理自慢ではあるが、縫い物はからきし駄目なので、仕立物の内職もできず、弱り果てたお民は口入れ屋から、自分にもできそうな手仕事を探して貰った。
 紙で花を作るその仕事は、季節に合わせて四季折々の花を紙でこしらえるのである。最初はなかなか手こずったものの、悪戦苦闘を重ねている中に、次第にコツを呑み込んで短時間できれいに仕上げられるようになった。
 今日もこれから、その口入れ屋のところに出来上がった花を持参するつもりであった。小脇に抱えた風呂敷包みには十日かけてこしらえた花が入っている。今は二月、梅の花が咲く頃ゆえ、紅白の梅を作って欲しいと頼まれた。
 実は何を隠そう、良人の源治はこの口入れ屋―三門屋信吾という男をひどく毛嫌いしている。というのも、今から一年前、まだ二人が所帯を持つ前、信吾がお民にさる旗本屋敷に妾奉公に上がらぬかと話を持ちかけたことがあったからだ。
 その頃、お民は兵助を亡くしたばかりで、とりあえず女一人で生きてゆくためには自分の力で稼がねばと考え、三門屋を訪ねて造花作りの仕事を紹介して貰った直後だった。
 三門屋は、お民を良人に先立たれた未亡人―しかも金を必要としていると知った上で、妾奉公の口を世話しようとしたのである。あのときもお民はこの和泉橋のほとりに佇み、泣いていた。
―あんたのように何の取り柄もない女がこのお江戸で一人生きてゆくためには、その身体を使うことくらいしかないんだよ。
 あの三門屋の言葉は流石にこたえた。
 あの男は面と向かって、お民のような能なしには、女であること―つまり、男に身体を売るしか生きてゆくすべはないと言い切ったのだ。
 泣いていたところを源治に見つかってしまったお民は、三門屋での一件を話さないわけにはゆかなかった。あのことがあるからか、源治はいまだに三門屋を嫌い抜き、〝あんな男から仕事なんぞ紹介して貰うのは止めちまえ〟とすごぶる機嫌が悪い。
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