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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第5章 伍
「これ、お民。そなたもそなたじゃ。殿のお傍に仕える女の心得として、殿が君子としてふさわしきおふるまいをなさるように心配りいたすのがそなたの務めであろう。それを何じゃ、殿のご寵愛を良いことに、朝っぱらから殿に縋りつき、淫らなふるまいに耽るとは。そなたも少しは石澤家の女として、慎みを持つが良い」
 キッとして柳眉を逆立てるその物凄い形相は、さながら般若の面のようでもある。なまじ美しい女性だけに、そのように殺気立つと凄惨さが際立った。
「どうか、こたびだけはご容赦のほど、お願い申し上げます。どうか、どうか、お許し下さいませ。すべては私の落度にございます」
 暗に嘉門は悪くないのだと、ひたすら嘉門を庇い詫びるその姿を、祥月院は何か考えるような眼で見つめていた。
 この時、お民は言い訳や言い逃れめいたことは一切口にしなかったのである。その潔さは、存外にこの謹厳で気位の高い女の心を打ったようであった。
 元々、一人息子の嘉門を溺愛し、大切に育ててきたのだ。
「どうか、こたびだけはお許しを―」
 そこまで言った時、お民がふいに言葉を途切れさせた。口許を片手で押さえ、苦しげに咳き込み始めたのだ。
 お民は、その場にうずくまり海老のようにか細い身体を折り曲げて咳き込み続ける。この頃はろくに食事をしていないため、吐き気はするものの、実際には何も吐くものがなく、苦い胃液が唾に混じって出てくるだけなのだ。
 涙眼になって咳き込み続けるお民に、祥月院が声をかけた。
「いかがした?」
 気遣わしげに言って近寄ろうとする。
 その祥月院を嘉門が横から突き飛ばすようにして押しのけ、お民を抱き起こした。
「お民ッ、大事ないか? お民、しっかり致せ」
 嘉門が我を失ったようにお民の身体を揺さぶる。
 祥月院は若い二人を見て、小さな吐息をついた。
「殿、落ち着きあそばせ。ただでさえ、そのように苦しんでおる者を手荒に扱うてはなりませぬ。そっとしておいておやりなさいませ」
 祥月院は初めて聞く穏やかな声音で息子を諭し、お民を覗き込んだ。
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