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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第1章 壱
 店の内は薄暗く、表の明るさに慣れたお民には、ひときわ陰鬱に映じた。店の奥は暗がりになっており、廊下がのびた奥に居並んだ座敷は、そこに部屋があるとは思えなかった。その中にいる人物がそも誰なのか、否、その造作すら確かめ得ない。
「うむ」
 その声は意外に近くで聞こえた。
 どうやら、声の主は部屋を出てきて、廊下に立っているようだ。
 懐手をしてこちらを眺めているらしい相手が尊大な物言いで短く応える。
 いまだ暗さに慣れぬお民の眼には、相手の立ち姿が辛うじて判別できるだけだ。
 お民の記憶のどこかに三門屋が口にしたひと言が引っかかったけれど、お民は気にも留めなかった。
 お民が持参した風呂敷包みを解(ほど)くと、三門屋は注意深く出来上がった花一本一本を検分してゆく。すべてを検めた後、その分の手間賃を銭箱から取り出し、渡した。
「いつもお世話になります。次の分はまた、十日ほど後にお持ちいたしますので、よろしくお願いします」
 たとえ当人のおらぬ場所では〝半ペン〟と呼んでいても、ここは下手に出なければならない。お民が慇懃に礼を述べ淑やかに頭を下げたその時、奥から呼び止められた。
「おい、待て」
 お民は訝しげに声のした方を見る。刹那、お民はハッと息を呑んだ。
 店の奥には昼間だというにも拘わらず、薄い闇が溜まったような暗がりが巣喰っている。その闇からスと抜け出して唐突に現れた人影を見るなり、お民は思わず悲鳴を上げそうになった。まるで闇そのものが凝(こご)って人の形を取ったようでもあり、闇に潜んでいた魔性の者が立ち現れたかのようでもある。
 その男は、それほどの禍々しさを全身からゆらゆらと立ち上らせていた。何かを燃やし尽くした後の灰(かい)塵(じん)の色を宿した瞳が困惑するお民を見下ろす。まるで値踏みするような冷たい眼つきだった。
「女、そなたは何ゆえに、そのようなことをしておるのだ」
 初め、お民は男の発した問いの意味が判らなかった。
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