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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第7章 第2話・弐
 人気のない方にゆくのは賢明ではないと判ってはいても、いつまでも同じ場所を堂々めぐりするわけにもゆかない。
 お民が仕方なく往来を抜け、町の外れまで歩いてきた時、嘉門がまた後ろから話しかけてきた。
「これから、そなたがどこにゆくつもりか当ててやろうか」
 なおも無視して黙りを決め込んでいると、嘉門がすっと前に回り込み、ゆく手を塞ぐように仁王立ちになった。
「そこをおどき下さいまし」
 お民が低い声で言うと、嘉門が嗤った。
「そなた、これより随明寺に参るのであろう」
 流石に、その刹那、顔色が変わったのが自覚できた。
 何故、自分が数日おきに随明寺に詣でることを、この男が知っている―?
 と、嘉門が惛い嗤い声を上げた。
「俺をあまり甘く見ぬことだな。そなたのことなど、何でもお見通しだ」
 その言葉に、一瞬、身体中の膚が粟立った。
 薄気味の悪いものでも見るように見つめると、嘉門が肩をすくめた。
「まぁ、そう申すのは嘘だ。流石の俺も、千里眼は持たぬからの。ここひと月ほど、そなたの後をつけさせて貰った。それゆえ、知ったことだ」
 何でもなく笑いながら言うが、お民は更に慄然と震えた。
 この男がひと月前から、私を付けていた―。それは烈しい衝撃となって、お民を打ちのめした。
 お民が随明寺に詣るのは、墓参りのためだ。
「だが、解せぬな。あのような場所に何用がある」
 どうやら、付けるとはいっても、広大な境内地までは付いてはきていないようだ。随明寺は格段に広い。昼間でも人気のない場所が多いから、寺内までついてこられていたらと考えると、身の毛がよだつほどの恐怖に駆られた。
 正直に応える必要はさらさらないが、このときのお民は半ば放心状態になっていた。それに、ありのままを応えたとて、この男には一切関わりないことだし、何がどう変わるとも思えない。
「亡くなった最初の亭主と倅のお墓が随明寺にございます」
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