この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第7章 第2話・弐
「ありがとう。お前さん」
 源治の心遣いが嬉しかった。
 これでは、到底、もう断ったなんて言えやしない。明日、もう一度訪ねてみて、まだ他の人が決まっていないようだったら、使って貰えるかどうか訊いてみよう。
 お民の心は久しぶりに明るく弾んだ。
 こんな良人の側にいれば、いつかきっと必ず、昔のような二人に戻れるのではないか。
 お民は、眼の前にひとすじの光を見い出したような気持ちだった。源治が自分を信じてくれと言うのであれば、自分もまた源治をどこまでも信じてついてゆこう。
 確かにお民の抱えている問題は重大で、夫婦にとっては深刻なものだ。でも、相手が源治なら、この途方もなく大きな試練もいつかは乗り越えられるような気がする。
 二人の姿はどこから見ても、仲睦まじい若夫婦そのものだ。話しながら歩いてゆく二人の後ろ姿を、嘉門が惛い眼で見つめていた。
 嘉門の凍てついた瞳の中で、蒼白い焔が燃え盛る。それは、いかにしても思いどおりにはならぬ女への憎しみと愛情が逆巻いて起こす嫉妬の焔であった。
 そのことを二人が知る由はなかった。

 それ以来、源治はお民を求めてくることはなくなった。夜、二人は一つ布団で寄り添い合って眠る。朝までただ、源治はお民をその腕に抱き込んで眠るだけだ。
 お民も親鳥の翼に包み込まれた雛のように心から安らいで眠った。
 時に、夜半めざめると、源治が眼を開いているときがある。健康な若い男が惚れた女と一つ布団にいながら夜、眠れぬ理由―、それが何であるのかをお民は知らなかった。
「どうしたの?」
 無邪気とも思える表情で見上げてくるお民に、源治は笑って首を振る。
「いや、ちょっと眼がさめただけさ」
 こんな時、源治は二つ年上のお民が幾つも年下のように思えてならない。だが、お民があの好色な殿さまの側に何ヶ月いても、けしてその世慣れぬ部分―妙に浮世離れしたところは少しも変わってはいないことに、ひそかに安堵してもいた。
/217ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ