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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第7章 第2話・弐
 源治は他の常連客に冷やかされ、嬉しげに笑っていた。源治が愉しそうにしていると、お民もまた嬉しくなる。
 すべてが上手くいっていた。
 いつものように最後の客を表まで送り出した後、お民は表の掛行灯の火を落とし、暖簾をしまった。
 まだ厨房で皿を洗っている主人の岩次に声をかける。
「旦那さん、お手伝いしましょうか」
 腰の持病のある女房のおしまは既に二階に上がって休んでいる。
「いや、ここはもう良いよ。今日は少し遅くなったから、ご亭主もさぞ気を揉んでるだろう。早く帰っておやり」
「それじゃ、お言葉に甘えて、お先に失礼させて頂きます」
 丁寧に腰を折ると、お民は岩次が持たせてくれた重箱を大切そうに抱え、夜道を歩き出す。
―それにしても、あの立ち居振る舞いは、ただの長屋暮らしの女房のもんじゃないねえ。どこぞに御殿奉公にでも上がったことがあるのかもしれないよ。
 お民が帰った後、皿を片付けながら岩次は女房のおしまが口にしていたことを何とはなしに思い出していた。確かに、先刻の挨拶などもどことなく品が漂っている。
 〝花ふく〟で雇った仲居は、別嬪なだけではなく、どことなく品がある―と、これもまたひそかな評判となっているらしい。中にはお民との間を取り持てとか、二階の座敷でお民に閨の相手をさせろなぞとけしからぬことを要求してくる輩もいるけれど、岩次はその都度、
―ここは出合茶屋じゃねえ。勘違いして貰っちゃ 、困る。そんなことが望みなら、場所が違うんじゃねえか。とっとと他を当たりな。
 と、けんもほろろに追い返している。
 岩次にしろ、おしまにしろ、子どものない身で、突如として現れたお民を実の娘か孫のように思い始めている。お民は気性も良いし、機転もきくし、何より人あしらいが上手い。
 よく働いてくれるので、岩次も助かっていた。そのお民を膚を売る女郎や遊び女のような真似事をさせるなんて、とんでもなかった。
 花ふくを出たお民は、重箱を落とさないように細心の注意を払いながら、ゆっくりと歩いていく。それでも、源治が待っていると思えば、脚は自然と早くなった。
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