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一度くらい夢を見たら
第2章 すごい偶然
ふと我に返り、
ページをめくってさらに読み進めていると、
誰かがすぐ隣に立ち止ったのがわかった。
きっと同じ類の雑誌を立ち読みしようという、
たぶん男だろう。
自分の頭の上まで存在感がある、というのが
男と判断した理由だ。
そしてその腕からやはり男だとわかった。
すみません、と小さく聞えて
美奈枝の体の前を腕が横切った。
もしも黙って手を伸ばしてきたら
舌打ちの一つでもしてやろうかと思ったが、
きちんと声をかけてくれたので
すっと一歩下がった。
男は美奈枝と同じ雑誌を手に取った。
「けっこう読まれるんですか?この雑誌」
まずは顔をあげて男の顔を凝視し、
それからパンと音をたてて雑誌を閉じた。
男の風貌は・・悪くなかった。
少しウェーブのかかった、耳にかかるくらいの髪。
うっすらとした顎鬚。
シャツのボタンは3つも外してある・・
まずサラリーマンには見えない。
今日が休みなのかもしれないが、
それでもやはり何か違う、と感じさせるような
雰囲気を持っている男だ。
美奈枝は何でもいいから言い返してやろうと
言葉を探したが、見つからない。
本を放り投げてその場から逃げ出そうか・・
だがこれは売り物だ。
乱暴に扱うのはいけない。
気持ちのスピードと動きのスピードが
連動しないまま、
もとあった場所へ戻そうとすると再び声がした。
「オレが書いたんです、その・・人妻の話」