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第29章 第五話　【今宵の桜～義高と大姫のものがたり～】

　確かに良人の言葉は正しかった。清盛は宿敵義朝の遺児に情けをかけたことを恐らくは死の間際まで後悔し続けたことだろう。
　清盛が臨終の際、
―憎き頼朝の首を取り、我が墓前に供えよ。
　と、居並ぶ子々孫々に遺言したことは伝え聞いている。
　それほどの憎しみと心残りを抱いて死地に向かう清盛を哀れだとも恐ろしいとも感じたものだったけれど―。