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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第3章 父と娘
 さつきは楓にとっては母代わりといって良い。代々、河越家に仕えてきた郎党の妻であり、さつき自身も二人の娘と一人の息子の母であった。既にその娘たちは他家に嫁ぎ、一人息子も一昨年結婚して、孫も生まれている。
「姫さまのお好きな砂糖湯をお持ち致しましたよ」
 幼いときから、むずかる楓に甘い砂糖湯を飲ませると、不思議に泣き止んだ。今でも優しい乳母はこうして砂糖湯を作ってくれる。
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