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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第7章 疑惑
 楓は子どもが甘えるように時繁の肩に身を預けた。触れ合った箇所が温かい。これが人を愛すること、温もりなのだと改めて時繁の傍にいられる幸せを噛みしめた。
 楓には彼が何者であろうが、関係はないのだ。彼女にとって時繁は出逢ったときから今も時繁であり、愛する男、それ以上でもそれ以下でもないのだから。ただ、時繁と同様、彼を今日まで生かして下された神仏には心から感謝した。
 二人はいつまでも燃え盛る焔を見つめながら、止むことのない海鳴りを聞いていた。
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