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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第11章 見知らぬ花婿
「また泣いている! 今度は何がいけなかったのだ。ええい、この頭は飾りものか。何故、私は好いたおなごを歓ばせることすらできないのか」
 また髪をかきむしっている彼を見て、千種は涙を零しながらも笑った。
「何だ、やっぱり泣いたり笑ったりと忙しいな、千種は」
 彼もまた困ったような嬉しいような奇妙な表情で千種を見ていた。やがて、次の瞬間、二人を取り囲む刻がピタリと止まった。鳴り響いていた潮騒はふっとかき消えた。
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