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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第13章 藤の舞
「どちらも素晴らしき歌であった。即興にしては歌も舞いも見事なものだ。いずれも藤の花のように咲き匂う美貌だな」
 そのひと言に、泰時の表情が微妙に動いた。むろん、それはほんのひと刹那のことにすぎず、後は何事もなかったかのように、静まり返った水面のように表情は消えた。
 頼経の意向で直ちに墨と硯が用意された。将軍の命で中央で舞った白拍子が御前に召し出された。頼経はよほど舞と歌に感動したらしく、自らの扇に白拍子たちが歌った歌を二首書き付けて賜った。
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