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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第20章 二度と逢えぬさだめなれば
 出家したその時、この世への未練も執着も丈なす黒髪とともにすべて断ち切ったつもりであったけれど、やはり我が産みし子への想いまでを棄てることは叶わなかったようだ。
 徳子は遠く洛中まで歩いて帰るあの子が雪に難儀しなければ良いがとひたすら祈るだけだった。
 大原野寂光院に住まう建礼門院、この時、五十歳になり給うとしていた―。 

               (了)
 
  


 本作に登場する右京こと右京大夫は実在した建礼門院右京大夫とは別人として描いております。実在の右京大夫は出家もしておらず、寂光院に女院を訪ねたことはあるものの、俗世にとどまり平家滅亡後も内裏で女房として華やかに活躍しました。
 また、安徳天皇の御衣で仕立てた幡は寂光院ではなく建礼門院が出家した長楽寺にあります。
  
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